判旨
行政庁の処分の取消処分が、根拠法の規定に基づかず行政行為取消の一般法理に基づいてなされた場合、その取消訴訟の出訴期間には根拠法の特別規定ではなく一般法の期間が適用される。
問題の所在(論点)
行政庁の処分の取消処分が、根拠法に基づかず職権取消しの一般法理によりなされた場合、その取消訴訟の出訴期間について、根拠法(自創法)が定める短期間の出訴期間制限が適用されるか、それとも一般法の出訴期間が適用されるか。
規範
行政庁が行った処分の取消処分について、それが根拠法の特定の規定に基づかず、行政行為取消の一般法理に基づいてなされたものである場合には、当該取消処分は根拠法による処分とはいえず、単なる行政庁の処分に該当する。したがって、その取消を求める訴えの出訴期間については、根拠法が定める特別の出訴期間の制限は適用されず、一般法(行政事件訴訟特例法、現行の行政事件訴訟法)の定める出訴期間が適用される。
重要事実
上告人は、自作農創設特別措置法(自創法)に基づく農地売渡計画の取消処分を受けた。上告人は、昭和24年5月31日に当該取消処分のあったことを知った。上告人は同年8月29日に本件取消訴訟を提起したが、原審は、自創法47条の2が定める1ヶ月の出訴期間を適用し、本件訴えを不適法(期間経過)として却下した。これに対し、上告人が一般法(行政事件訴訟特例法)の6ヶ月の期間が適用されるべきとして上告した事案である。
あてはめ
本件農地売渡計画の取消処分は、自創法の規定に基づき同法の定める手続き等によってなされたものではなく、行政行為取消の一般法理に基づき、単なる行政庁の処分としてなされたものである。そうであれば、本件処分は「自創法による行政庁の処分」には該当しない。したがって、自創法47条の2が定める「処分を知った日から1ヶ月以内」という短期の出訴期間を適用することはできず、一般法である行政事件訴訟特例法5条1項の「処分を知った日から6ヶ月以内」という期間が適用されるべきである。
結論
本件訴訟の提起は、上告人が処分を知った日から約3ヶ月後であり、一般法が定める6ヶ月の出訴期間内になされている。したがって、本件訴えは適法であり、自創法を適用して却下した原判決は破棄を免れない。
事件番号: 昭和28(オ)1330 / 裁判年月日: 昭和30年12月2日 / 結論: 棄却
農地売渡処分の取消処分に対する出訴期間については、自作農創設特別措置法第四七条の二の規定によるべきではなく、行政事件訴訟特例法第五条の規定によるべきである。
実務上の射程
特別法に短期の出訴期間が定められている場合でも、行政庁の行為が「その法律に基づく処分」といえるかどうかを厳格に判断すべきことを示唆している。特に、実定法上の根拠を欠く職権取消しについては、当該法律の特別の期間制限が及ばないとする理論構成は、権利救済の観点から重要である。現在の行政事件訴訟法下においても、特別法による期間制限の適用の有無を検討する際の解釈指針となり得る。
事件番号: 昭和23(オ)137 / 裁判年月日: 昭和24年5月18日 / 結論: 棄却
一 農地買収計画に定められた農地につき、所有権を主張する者は、買収計画に所有者と記載されていなくても、自作農創設特別措置法第七条によつて行政上の救済を求めることができる。 二 昭和二二年一二月法律第二四一号自作農創設特別措置法改正法律附則第七条は、憲法第三二条及び憲法第三九条に違反しない。
事件番号: 昭和25(オ)10 / 裁判年月日: 昭和26年11月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の取消しを求める訴えが、出訴期間を経過した後に提起された不適法なものである場合、当該処分に無効原因があるとの主張が含まれていても、裁判所は処分の当否について実体的な判断を加える必要はない。 第1 事案の概要:上告人所有の農地に対し、農地委員会および県知事が農地買収計画および買収処分を行った…
事件番号: 昭和26(オ)414 / 裁判年月日: 昭和33年8月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく農地買収処分による物権変動については、民法177条の適用はなく、登記がなくても第三者に対抗できる。また、同法に基づく買収により所有権を失った旧所有者であっても、買収処分の無効等を争う訴えの利益は否定されない。 第1 事案の概要:本件は、自作農創設特別措置法に基づき行われ…
事件番号: 昭和25(オ)287 / 裁判年月日: 昭和26年10月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分に対する取消訴訟において、出訴期間の規定は公法上の法律関係を早期に確定させるための強行規定であり、処分の実体的な違法性の有無や行政庁による訴訟提起の要請にかかわらず適用される。 第1 事案の概要:上告人は、自作農創設特別措置法に基づく農地買収処分について、病者が不在地主にならない保障に反す…