判旨
売買契約において、目的物件の過去の事故歴がないこと等を意思表示の内容とした事実が認められない場合には、動機の錯誤による無効は認められない。また、債務不履行を理由とする解除を主張するためには、債務者の責めに帰すべき事由による履行不能の事実が必要である。
問題の所在(論点)
1. 目的物の過去の事故歴に関する認識の相違が、意思表示の要素の錯誤(民法95条)を構成するか。 2. 債務者の帰責事由による履行不能の事実が認められない場合に、契約解除(民法543条)が認められるか。
規範
意思表示の要素に錯誤があるといえるためには、表意者が主観的にその事項を意思表示の内容としたことに加え、客観的にも契約の重要な内容として合意の前提となっていたことが必要である。また、民法第543条(改正前)に基づく履行不能による契約解除が認められるためには、債務者の責めに帰すべき事由による履行不能の事実が立証されなければならない。
重要事実
上告人(買主)は、本件売買取引に際し、目的物件が「従来運送上の事故を惹起したことのないものであること」等を特に意思表示の内容としたと主張し、売買無効の抗弁を提出した。また、併せて目的物件の所有権移転義務が被上告人(売主)の責めに帰すべき事由により履行不能となったとして、契約解除の抗弁を提出した。
あてはめ
1. 錯誤無効について:上告人は事故歴がないことを意思表示の内容としたと主張するが、原審においてこれを確認するに足りる証拠がないと判断されており、当該事項が契約の要素になっていたとはいえない。 2. 契約解除について:所有権移転義務が被上告人の責めに帰すべき事由により履行不能となった事実を認めるに足りる証拠もないため、解除の前提を欠く。したがって、上告人の抗弁はいずれも排斥される。
結論
本件売買契約は無効ではなく、また履行不能を理由とする解除も認められないため、上告人の請求は棄却される。
実務上の射程
動機の錯誤について、それが「意思表示の内容」となっていたか否かの事実認定の重要性を示す。実務上、特定の属性(事故歴の有無等)を契約の条件とする場合は、契約書等で明示的に合意の内容としておく必要があることを示唆する。また、履行不能の立証責任が解除を主張する側にあることも再確認される。
事件番号: 昭和30(オ)427 / 裁判年月日: 昭和31年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白が成立した場合、その自白が錯誤に基づき、かつ、その取消しの主張立証がなされない限り、裁判所および当事者はこれに拘束される。 第1 事案の概要:上告人(買主)が被上告人(売主)に対し、売買代金の請求等に関し訴えを提起した事案。上告人は、第一審以来、本件売買の目的物件である生甘藷合計356…