判旨
建物の賃貸借において、解約の申入れ等に必要とされる「正当の事由」の有無は、諸般の事情を総合考慮して判断すべきであり、その判断基準の解釈適用は憲法問題ではなく法律上の問題にすぎない。
問題の所在(論点)
借家法1条の2(現行借地借家法28条)に規定される「正当の事由」の存否に関する裁判所の判断が、憲法違反を理由とする適法な再上告理由(旧民事訴訟法409条ノ2第1項)に該当するか。
規範
建物の賃貸借契約における解約の申入れ(または更新拒絶)には、借家法1条の2(現行借地借家法28条)に規定される「正当の事由」が必要である。この正当事由の存否は、賃貸人・賃借人双方が建物を必要とする事情のほか、従前の経過、利用状況、立退料の提供等を総合的に考慮して判断されるべき事案の解釈適用の問題である。
重要事実
上告人は、建物の賃貸借に関する解約申入れ等の効力について、借家法1条の2(旧法)の解釈適用を不服として上告した。上告人は、原審の正当事由に関する判断が憲法に違反する旨を主張したが、事案の具体的な事実関係や原審の判断の詳細は本判決文からは不明である。
あてはめ
最高裁判所は、上告人の主張が実質的に借家法1条の2の解釈適用を争うものであると指摘した。正当事由の有無という法律要件の該否に関する判断は、法規の解釈適用の問題にとどまり、直接的に憲法の条項に抵触するか否かを判断する憲法問題には該当しないと判断される。
結論
本件上告は、適法な再上告理由に該当しないため、棄却される。
実務上の射程
本判決は、正当事由の判断が事実認定および法律解釈の範疇であることを示している。司法試験においては、現行借地借家法28条の正当事由の存否を論じる際、憲法上の権利(財産権等)の侵害を直接論じるのではなく、同条が掲げる具体的要素(必要性、利用状況、立退料等)に沿って事実をあてはめるべきであることを示唆するものである。
事件番号: 昭和30(オ)255 / 裁判年月日: 昭和30年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の賃貸人が賃貸借契約の解約申入れ等による終了を主張して明渡しを求める場合、賃貸後の諸事情を総合的に考慮し、明渡請求を認容することが相当であると判断される場合には、借地借家法上の正当事由が認められる。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)に対し、被上告人(賃貸人)が係争家屋の賃貸後の諸事情を理由と…