判旨
買収計画に対する不服申立期間を経過し不服申立権を喪失した後であっても、当該計画に基づく買収処分の取消訴訟において、前提となる買収計画の違法を主張して争うことができる。
問題の所在(論点)
先行する行政処分(買収計画)につき不服申立期間が経過して不可争力が生じた後に、後続の行政処分(買収処分)の取消訴訟において、先行処分の違法を理由として後続処分の取消しを求めること(違法の承継)ができるか。
規範
先行処分である買収計画に不服を申し立てる権利を失った後であっても、後続処分である買収処分の取消訴訟において、その前提となる先行処分の違法性を主張し、後続処分の取消しを求めることができる(違法の承継を肯定する)。
重要事実
上告人(国)は、当初の買収令書に基づく買収処分を撤回し、新たな買収処分を実施した。これに対し被上告人(農地所有者等)が買収処分の取消しを求めて提訴した。上告人は、買収処分の前提となる買収計画について、すでに不服申立期間が経過し不服申立権が消滅している以上、買収処分の取消訴訟において計画の違法を主張することは許されないと主張した。
あてはめ
最高裁は、先行判例(昭和25年9月15日判決等)を引用し、買収計画に対する不服申立の権利を失った後であっても、当該計画に基づく買収処分の取消訴訟において右買収計画の違法を攻撃しうることは、当裁判所の判例とするところであると判示した。したがって、先行処分の不可争力の発生は、後続処分の訴訟における先行処分の違法主張を妨げるものではないと解される。
結論
買収計画に対する不服申立権を喪失した後でも、買収処分の取消訴訟において買収計画の違法を主張できる。本件上告は棄却された。
実務上の射程
事件番号: 昭和30(オ)695 / 裁判年月日: 昭和31年4月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】先行する買収計画に違法がある場合、計画に対する不服申立期間経過後であっても、後行の買収処分の取消訴訟において計画の違法を主張できる。また、法令上の除外要件に客観的に該当する土地を対象とする買収は、行政庁による指定の有無にかかわらず違法となる。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法に基づき、行政庁…
先行処分に不可争力が生じても後続処分を争う際に先行処分の瑕疵を主張できる「違法の承継」を認めた事例。司法試験においては、二つの処分が連続して行われ、先行処分を争わなかった者が後続処分の段階で先行処分の瑕疵を主張する場合に、本判例の枠組み(実質的に同一の目的を追求する一連の手続きか否か等)を用いて論じる際の基礎となる。
事件番号: 昭和32(オ)116 / 裁判年月日: 昭和33年11月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分に瑕疵がある場合でも、その後に正当な手続を経て瑕疵が補完され、処分時において適法な状態が確保されているならば、当該処分は有効なものとして存続し得る。 第1 事案の概要:農地委員会が土地の買収計画を定め、異議申立を却下した後、上告人は県農地委員会へ訴願を提起した。県農地委員会は法定期間経過後…
事件番号: 昭和28(オ)657 / 裁判年月日: 昭和30年4月26日 / 結論: 破棄差戻
登記簿上の所有者を所有者としてした農地買収処分は、真の所有者がこれを知りまたは知り得べき状態にあつたにかからず、不服申立の方法を採らなかつた場合は、当然には無効ではない。
事件番号: 昭和28(オ)451 / 裁判年月日: 昭和34年1月29日 / 結論: 棄却
同一土地につき二個の買収計画が並存することは相当でなく、両計画をともに取り消した上で新たに買収計画を定むべきであるとの理由で、町農業委員会の定めた農地買収計画を取り消す旨の訴願裁決があつた場合、町農業委員会が右趣旨に従い右土地につき再度買収計画を定めることは、訴願法第一六条に違反するものではない。
事件番号: 昭和30(オ)138 / 裁判年月日: 昭和31年5月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分が法律上の手続規定に違反してなされた場合であっても、その瑕疵が当然に処分を無効とするものではなく、出訴期間内に取り消されない限り、公定力により有効なものとして取り扱われる。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法に基づき農地の買収処分が行われた際、買収令書が真の所有者である上告人ではなく、…