判旨
先行する買収計画に違法がある場合、計画に対する不服申立期間経過後であっても、後行の買収処分の取消訴訟において計画の違法を主張できる。また、法令上の除外要件に客観的に該当する土地を対象とする買収は、行政庁による指定の有無にかかわらず違法となる。
問題の所在(論点)
1. 先行する買収計画の違法を、後行の買収処分の取消訴訟において主張すること(違法の承継)ができるか。 2. 行政庁の指定がない場合であっても、客観的に買収除外事由に該当する土地を買収することは違法となるか。
規範
1. 買収計画と買収処分のように、一連の手続きが連続して行われる場合、先行する計画段階の違法は後行の処分に承継される。したがって、計画に対する不服申立権を失った後であっても、処分の取消訴訟において計画の違法を攻撃することができる。 2. 買収除外事由(自作農創設特別措置法5条5号等)に該当するか否かは、行政庁による指定の有無といった形式的判断ではなく、客観的事態に基づき判断されるべきである。客観的に土地使用目的の変更を相当とする土地に該当する場合、これを買収することは違法となる。
重要事実
自作農創設特別措置法に基づき、行政庁が本件土地(その大部分は山林・原野で、一部が農地)に対する買収計画を樹立し、これに基づき買収処分を行った。当該土地は「近く土地使用の目的を変更することを相当とする(住宅地とするのが相当な)土地」であったが、農地委員会による同法5条5号の指定は受けていなかった。旧所有者は、買収計画に対する不服申立期間を徒過した後に、買収処分の取消しを求めて提訴した。
あてはめ
1. 判例の趣旨に照らせば、買収計画と買収処分は密接に関連する一連の手続きであるため、計画段階の瑕疵は処分に承継され、旧所有者は処分の取消訴訟において計画の違法を主張し得る。 2. 本件土地は、買収計画樹立当時、その大部分が山林乃至原野であり、一部に農地が含まれていたとしても、遠からず住宅地として使用することを相当とする客観的事態が存在したといえる。したがって、農地委員会による形式的な指定を欠いていたとしても、客観的に買収に適しない土地を対象とした点において、当該買収処分は違法であると解される。
結論
本件上告は棄却される。買収計画の違法を処分の取消訴訟で主張することは可能であり、本件土地が客観的に買収除外事由に該当する以上、当該買収処分は違法である。
事件番号: 昭和38(オ)210 / 裁判年月日: 昭和39年2月14日 / 結論: 棄却
原判決が農地買収計画が失効したと認定したのは不合理ではない。
実務上の射程
行政法における「違法の承継」の論点において、先行行為と後行行為が目的を同じくし、先行行為での争訟機会が十分に確保されていない場合や受ける不利益が大きい場合に、後行行為の段階で先行行為の瑕疵を争うことを認める先駆的判例として機能する。また、羈束的側面を持つ要件判断において、行政庁の裁量や形式的指定よりも客観的事実を重視する解釈指針としても有用である。
事件番号: 昭和27(オ)1132 / 裁判年月日: 昭和32年9月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の買収処分において、登記簿上の名義人を所有者としてなされた処分は、異議申立や出訴期間内に行われた争訟によって是正されない限り、直ちに当然無効とはならない。 第1 事案の概要:政府が自作農創設特別措置法に基づき農地の買収処分を行った際、真実の所有者ではなく登記簿上の名義人を相手方として買収計画お…
事件番号: 昭和38(オ)355 / 裁判年月日: 昭和38年12月19日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法第五条第四号の規定による主務大臣の指定する土地に関する件(昭和二三年一月二九日農林省告示第一〇号)は、耕地整理法に基づき耕地整理を施行した土地で宅地としての利用を増進する効果を伴つたもののうち、その施行が都市計画法施行以前に設立された耕地整理組合によつてなされたものに限り、これをもつて自作農創設特別…
事件番号: 昭和30(オ)331 / 裁判年月日: 昭和32年12月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地買収計画の無効確認を求める訴訟において、当該農地の所有権を有しない者は、行政処分の違法を主張してその無効確認を求める法律上の利益を有しない。 第1 事案の概要:上告人は、農地委員会が行った本件農地三筆の買収計画が違法であるとして、その無効確認を求めて提訴した。しかし、事実認定によれば、上告人と…
事件番号: 昭和32(オ)1190 / 裁判年月日: 昭和33年11月4日 / 結論: 破棄差戻
広告手続を経ない農地買収計画は外部に対して効力を有しない。