判旨
農地買収計画の無効確認を求める訴訟において、当該農地の所有権を有しない者は、行政処分の違法を主張してその無効確認を求める法律上の利益を有しない。
問題の所在(論点)
行政処分の対象となった物件について、実体法上の権利を有しない者が、当該処分の無効確認を求めるにつき「法律上の利益」を有するか。
規範
行政処分の無効確認を求める訴えの提起が認められるためには、当該処分の無効を主張して争うことにつき「法律上の利益」を有することが必要である。具体的には、当該処分によって自己の権利や法的保護に値する利益が直接侵害され、または侵害される恐れがある立場でなければならない。
重要事実
上告人は、農地委員会が行った本件農地三筆の買収計画が違法であるとして、その無効確認を求めて提訴した。しかし、事実認定によれば、上告人と処分対象農地の旧所有者との間には売買の事実はなく、上告人が勝訴した所有権移転登記手続等の前訴もいわゆる「なれあい訴訟」であった。結果として、上告人は本件農地の真実の所有者ではないことが判明した。
あてはめ
上告人は、本件農地の売買契約が成立しておらず、また前訴の勝訴判決もなれあい訴訟によるものであるため、本件農地の所有権を取得していない。農地買収計画という行政処分によって直接権利を制約されるのは、その目的物の所有者である。したがって、所有権を有しない上告人が、買収計画の違法を理由にその無効確認を求めたとしても、それは自己の権利利益の救済を求めるものとはいえず、訴えの利益が認められない。
結論
上告人は本件農地の所有者でない以上、買収計画の無効確認を求める法律上の利益を有しないため、請求は棄却されるべきである。
実務上の射程
事件番号: 昭和30(オ)292 / 裁判年月日: 昭和32年4月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の買収処分が無効であったとしても、その後に当該土地を贈与された者が農地法上の許可を得ていない場合、所有権を取得し得ないため、買収処分の無効確認及び登記抹消等を求める訴えの利益(当事者適格)を欠く。 第1 事案の概要:福島県知事は、自作農創設特別措置法に基づき、本件土地を補助参加人の所有地として…
行政訴訟における原告適格(法律上の利益)の判断において、処分の対象物に対する実体法上の権利の有無が基礎となることを示した。特に、登記等の形式的な外観があっても、それが虚偽やなれあいに基づくもので実体的権利を伴わない場合には、原告適格が否定されるという実務上の指針となる。
事件番号: 昭和30(オ)695 / 裁判年月日: 昭和31年4月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】先行する買収計画に違法がある場合、計画に対する不服申立期間経過後であっても、後行の買収処分の取消訴訟において計画の違法を主張できる。また、法令上の除外要件に客観的に該当する土地を対象とする買収は、行政庁による指定の有無にかかわらず違法となる。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法に基づき、行政庁…
事件番号: 昭和32(オ)1190 / 裁判年月日: 昭和33年11月4日 / 結論: 破棄差戻
広告手続を経ない農地買収計画は外部に対して効力を有しない。
事件番号: 昭和30(オ)920 / 裁判年月日: 昭和31年12月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分が当然無効とされるためには、その瑕疵が重大であるだけでなく、かつ客観的に明白であることを要する。本件買収処分については、瑕疵が重大であっても明白とは認められないため、当然無効とはならない。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法に基づき、行政庁が本件農地の買収処分を行った。しかし、当該処分…
事件番号: 昭和27(オ)1132 / 裁判年月日: 昭和32年9月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の買収処分において、登記簿上の名義人を所有者としてなされた処分は、異議申立や出訴期間内に行われた争訟によって是正されない限り、直ちに当然無効とはならない。 第1 事案の概要:政府が自作農創設特別措置法に基づき農地の買収処分を行った際、真実の所有者ではなく登記簿上の名義人を相手方として買収計画お…