判旨
農地の買収処分が無効であったとしても、その後に当該土地を贈与された者が農地法上の許可を得ていない場合、所有権を取得し得ないため、買収処分の無効確認及び登記抹消等を求める訴えの利益(当事者適格)を欠く。
問題の所在(論点)
行政処分の無効を主張する者が、その処分の効力如何にかかわらず、別の法的制限によって当該権利を有効に取得し得ない場合、当該処分の無効確認を求める当事者適格(訴えの利益)を有するか。
規範
行政処分の無効確認を求める訴えにおいては、当該処分の無効によって自己の法的地位が回復し、または権利を取得し得る法的立場にある者に限り、原告適格(訴えの利益)が認められる。特に農地の所有権移転を伴う場合、法律上の制限(農地法等の許可要件)により権利取得が不可能な者は、処分の無効を主張する法律上の利益を有しない。
重要事実
福島県知事は、自作農創設特別措置法に基づき、本件土地を補助参加人の所有地として買収処分(本件処分)を行った。上告人は、本件処分によって土地が国に帰属した後に、元所有者である補助参加人から本件土地の贈与を受けた。しかし、上告人はこの贈与による所有権移転について、農地法3条に基づく知事の許可を得ていなかった。その上で、上告人は本件処分の無効確認と所有権移転登記を求めて提訴した。
あてはめ
上告人は、本件処分が無効であれば補助参加人に所有権が残存し、自身への贈与が有効になると主張する。しかし、上告人が主張する贈与は農地法3条の許可を欠いており、仮に本件処分が無効であったとしても、同法の規定により所有権が上告人に帰属することはない。したがって、本件処分の無効確認を求めたとしても、上告人の権利が実現される見込みはなく、法的地位に何ら影響を及ぼさない。よって、上告人は本訴について当事者としての適格を欠くと解される。
結論
上告人は本訴について当事者適格を有しないため、請求を棄却(実質的には訴え却下相当)した原審の判断は正当である。
事件番号: 昭和30(オ)331 / 裁判年月日: 昭和32年12月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地買収計画の無効確認を求める訴訟において、当該農地の所有権を有しない者は、行政処分の違法を主張してその無効確認を求める法律上の利益を有しない。 第1 事案の概要:上告人は、農地委員会が行った本件農地三筆の買収計画が違法であるとして、その無効確認を求めて提訴した。しかし、事実認定によれば、上告人と…
実務上の射程
行政訴訟における原告適格(法律上の利益)の有無を判定する際、当該処分が仮に無効となったとしても、他の法的規制(本件では農地法の許可制)によって原告の意図する法的効果が発生しない場合には、訴えの利益を否定する論拠として活用できる。答案上は、処分の違法性を論じる前の門前払いの論理として重要である。
事件番号: 昭和40(行ツ)111 / 裁判年月日: 昭和42年3月31日 / 結論: 破棄差戻
農地の買収処分無効確認の訴と所有権移転登記抹消登記手続請求の訴との併合訴訟において、前者の訴につき、第一審が取得時効の完成を認めて訴を不適法として却下したのに対し、原審が時効の完成を否定し第一審判決を取り消して、請求を認容したのは、民訴法第三八八条の必要的差戻しの規定に違背するものというべきであるが、後者の訴についての…
事件番号: 昭和27(オ)1132 / 裁判年月日: 昭和32年9月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の買収処分において、登記簿上の名義人を所有者としてなされた処分は、異議申立や出訴期間内に行われた争訟によって是正されない限り、直ちに当然無効とはならない。 第1 事案の概要:政府が自作農創設特別措置法に基づき農地の買収処分を行った際、真実の所有者ではなく登記簿上の名義人を相手方として買収計画お…
事件番号: 昭和42(行ツ)79 / 裁判年月日: 昭和45年2月17日 / 結論: 棄却
民法一八五条にいう「新権原」の発生を主張するについて、占有者は、その取得につき登記その他の対抗要件を必要としない。 (参考) 一審、札幌地裁昭和三五年(行)第七号、同年(ワ)第三〇八号 昭和四〇年九月二四日判決(訟務月報一二巻二号二六七頁)
事件番号: 昭和37(オ)1403 / 裁判年月日: 昭和39年10月20日 / 結論: 破棄自判
自作農創設特別措置法により買収農地の売渡を受けた者が当該農地の所有権を時効取得したときは、右農地の被買収者は、その買収処分の無効確認を求める訴の利益を有しない。