民法一八五条にいう「新権原」の発生を主張するについて、占有者は、その取得につき登記その他の対抗要件を必要としない。 (参考) 一審、札幌地裁昭和三五年(行)第七号、同年(ワ)第三〇八号 昭和四〇年九月二四日判決(訟務月報一二巻二号二六七頁)
民法一八五条にいう「新権原」の発生と占有者がこれを所有者に対抗するための登記の要否
民法185条,民法177条
判旨
行政処分の無効確認を求める訴えの利益は、当該処分に係る目的物の所有権が第三者によって時効取得された場合には失われる。また、行政処分の違法を理由とする国家賠償請求においては、あらかじめ当該処分の取消しや無効確認の判決を得る必要はない。
問題の所在(論点)
1. 行政処分の対象となった財産権を第三者が時効取得した場合、当該処分の無効確認を求める訴えの利益は認められるか。2. 行政処分の違法に基づく損害賠償請求において、あらかじめ処分の取消しや無効確認を得ておく必要があるか。
規範
1. 行政処分の目的物について、第三者が時効取得により確定的に権利を取得したときは、処分の無効を確認しても原状回復が不可能であるため、確認の訴えの利益を欠く。2. 行政処分の違法を理由として損害賠償(国家賠償)を請求する場合、公定力の制度が損害賠償請求を排斥するものではないため、あらかじめ当該行政処分の取消しまたは無効確認の判決を得る必要はない。
重要事実
上告人は、知事が行った農地の買収処分が無効であると主張し、その無効確認を求めて出訴した。しかし、当該買収農地はすでに第三者に売り渡されており、その売渡を受けた者が農地の所有権を時効取得するに至っていた。また、上告人は損害賠償請求の前提として無効確認が必要である旨も主張していたと考えられる(判旨から推認)。
事件番号: 昭和37(オ)1403 / 裁判年月日: 昭和39年10月20日 / 結論: 破棄自判
自作農創設特別措置法により買収農地の売渡を受けた者が当該農地の所有権を時効取得したときは、右農地の被買収者は、その買収処分の無効確認を求める訴の利益を有しない。
あてはめ
1. 本件において、買収農地は売渡先によって時効取得されている。この場合、仮に買収処分が無効であったとしても、上告人が所有権を回復することは法的に不可能であるため、無効確認によって法的地位が改善する余地はなく、確認の利益は認められない。2. 上告人が損害賠償請求を予定しているとしても、損害賠償訴訟の審理において行政処分の違法性を主張・立証すれば足りるため、その前審として無効確認の訴えを維持する必要性も認められない。
結論
買収処分の無効確認を求める訴えの利益を欠くとした原審の判断は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
訴えの利益の消滅(事後的消滅)に関する論証と、国家賠償請求における「取消訴訟の排他的管轄の不適用(処分が有効なままでも国賠請求は可能)」という重要原則を示す。答案上では、国賠請求の前に取消・無効確認が必要かという論点に対する判例の立場として引用する。
事件番号: 昭和40(行ツ)111 / 裁判年月日: 昭和42年3月31日 / 結論: 破棄差戻
農地の買収処分無効確認の訴と所有権移転登記抹消登記手続請求の訴との併合訴訟において、前者の訴につき、第一審が取得時効の完成を認めて訴を不適法として却下したのに対し、原審が時効の完成を否定し第一審判決を取り消して、請求を認容したのは、民訴法第三八八条の必要的差戻しの規定に違背するものというべきであるが、後者の訴についての…
事件番号: 昭和42(行ツ)11 / 裁判年月日: 昭和42年9月14日 / 結論: 棄却
職権調査事項に関する当事者の主張については、民訴法第一三九条の適用がない。
事件番号: 昭和39(行ツ)95 / 裁判年月日: 昭和45年11月6日 / 結論: 棄却
行政事件訴訟法三六条にいう「目的を達することができない」とは、処分の無効等を前提とする現在の法律関係に関する訴の形態を法律上とることができないことをいい、具体的に勝訴の見込みがないことまでをもいうものではない。
事件番号: 昭和30(オ)292 / 裁判年月日: 昭和32年4月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の買収処分が無効であったとしても、その後に当該土地を贈与された者が農地法上の許可を得ていない場合、所有権を取得し得ないため、買収処分の無効確認及び登記抹消等を求める訴えの利益(当事者適格)を欠く。 第1 事案の概要:福島県知事は、自作農創設特別措置法に基づき、本件土地を補助参加人の所有地として…