職権調査事項に関する当事者の主張については、民訴法第一三九条の適用がない。
職権調査事項と民訴法第一三九条
民訴法139条
判旨
行政処分の無効確認を求める訴えにおいて、第三者が目的物の所有権を時効取得した場合には訴えの利益が失われ、将来の国家賠償請求の準備を目的とする場合であっても例外ではない。
問題の所在(論点)
1. 訴えの利益の欠缺を指摘する主張は、民事訴訟法上の適時提出主義等の制限を受けるか。 2. 処分の対象物について第三者の時効取得が成立した場合、無効確認の訴えの利益は失われるか。 3. 将来の国家賠償請求の準備という目的がある場合、訴えの利益は維持されるか。
規範
行政事件訴訟における訴えの利益は職権調査事項であり、時期に遅れた攻撃防御方法等の制限(民訴法157条等)を受けない。また、無効確認の訴えが適法であるためには、処分後に出現した事情によって原状回復が法律上不可能となった場合には原則として訴えの利益が失われる。さらに、将来の国家賠償請求のために処分を争う必要性があるとしても、それのみでは訴えの利益を肯認するに足りない。
重要事実
上告人は、牧野(ぼくや)の買収計画が無効であることの確認を求めて訴えを提起した。これに対し、当該牧野の売渡しを受けた被上告人補助参加人らは、訴訟継続中に当該土地を時効取得した旨の抗弁を提出した。この抗弁は控訴提起から約11年が経過した原審第36回口頭弁論期日で初めて提出されたものであったが、原審はこれを採用し、土地所有権が第三者に帰属した以上、買収計画の無効を認める実益がなくなったとして、訴えを却下した。
事件番号: 昭和46(行ツ)46 / 裁判年月日: 昭和47年12月12日 / 結論: 棄却
一、自作農創設特別措置法に基づき所有土地を買収された者が買収計画または買収処分に対する取消訴訟を提起しても、右土地につき売渡の相手方のために進行する取得時効は中断されない。 二、自作農創設特別措置法に基づき所有土地を買収された者は、右土地の売渡の相手方を被告として、買収計画または買収処分の取消を条件とする原状回復の請求…
あてはめ
1. 訴えの利益は裁判所が職権で判断すべき職権調査事項であるため、当事者による主張の時期を問わず審理の対象となる。したがって、控訴審で11年経過後に提出された事実であっても、裁判所はこれを考慮しなければならない。 2. 本件では第三者が時効により所有権を取得しているため、仮に買収計画が無効と確定しても、上告人が所有権を回復することは法律上不可能となっている。この状態では、無効確認判決によって得られる法的利益が存在しない。 3. 国家賠償請求については、あらかじめ処分の取消判決や無効確認判決を得ておく必要はない。したがって、将来の損害賠償請求のために無効確認を求める必要があるとしても、その一事をもって訴えの利益を維持する理由とはならない。
結論
時効取得等により原状回復が不可能となった場合、無効確認の訴えの利益は消滅し、将来の国家賠償請求の意図があっても結論を左右しないため、訴えは不適法として却下される。
実務上の射程
行政処分の効力を争う訴訟(取消訴訟・無効等確認訴訟)全般に共通する「訴えの利益」の判断枠組みとして重要である。特に「事情判決」に至る前の段階で、原状回復の不能を理由に訴えを却下する論拠として機能する。また、行政訴訟と国家賠償の関係(いわゆる既判力の問題ではない前置の要否)についても言及しており、訴えの利益の補充性を考える際の基本判例となる。
事件番号: 昭和42(行ツ)79 / 裁判年月日: 昭和45年2月17日 / 結論: 棄却
民法一八五条にいう「新権原」の発生を主張するについて、占有者は、その取得につき登記その他の対抗要件を必要としない。 (参考) 一審、札幌地裁昭和三五年(行)第七号、同年(ワ)第三〇八号 昭和四〇年九月二四日判決(訟務月報一二巻二号二六七頁)
事件番号: 昭和37(オ)1403 / 裁判年月日: 昭和39年10月20日 / 結論: 破棄自判
自作農創設特別措置法により買収農地の売渡を受けた者が当該農地の所有権を時効取得したときは、右農地の被買収者は、その買収処分の無効確認を求める訴の利益を有しない。
事件番号: 昭和45(行ツ)23 / 裁判年月日: 昭和49年12月23日 / 結論: 棄却
一、自作農創設特別措置法による買収土地を売渡の相手方が一〇年間所有の意思をもつて、平穏、公然に占有し、その占有の始め、善意、無過失であつた場合において、買収に関する処分の取消判決が確定したときは、売渡の相手方は、民法一六二条二項により右土地の所有権を時効取得する。 二、自作農創設特別措置法による買収土地を売渡の相手方が…
事件番号: 昭和40(行ツ)111 / 裁判年月日: 昭和42年3月31日 / 結論: 破棄差戻
農地の買収処分無効確認の訴と所有権移転登記抹消登記手続請求の訴との併合訴訟において、前者の訴につき、第一審が取得時効の完成を認めて訴を不適法として却下したのに対し、原審が時効の完成を否定し第一審判決を取り消して、請求を認容したのは、民訴法第三八八条の必要的差戻しの規定に違背するものというべきであるが、後者の訴についての…