一、自作農創設特別措置法による買収土地を売渡の相手方が一〇年間所有の意思をもつて、平穏、公然に占有し、その占有の始め、善意、無過失であつた場合において、買収に関する処分の取消判決が確定したときは、売渡の相手方は、民法一六二条二項により右土地の所有権を時効取得する。 二、自作農創設特別措置法による買収土地を売渡の相手方が一〇年間所有の意思をもつて、平穏、公然に占有し、その占有の始め、善意、無過失であつたときは、被買収者が右土地の所有権の回復を目的として提起した買収計画取消訴訟は、その利益を失う。
一、自作農創設特別措置法による買収土地の売渡の椙手方による占有と右土地の所有権の時効取得 二、自作農創設特別措置法による買収土地を売渡の相手方が一〇年間所有の意思をもつて、平穏公然に占有しその占有の始め善意無過失であつた場合と右土地の所有権の回復を目的とする買収計画取消訴訟の利益
自作農創設特別措置法3条1項,自作農創設特別措置法16条1項,民法162条,行政事件訴訟法9条
判旨
行政処分の取消判決によって権利回復が可能であっても、第三者が当該物件を時効取得した場合には、処分の取消しを求める訴えの利益は消滅する。また、行政庁を被告とする取消訴訟の提起は、占有者に対する取得時効の中断事由には当たらない。
問題の所在(論点)
行政処分の取消訴訟の係属中に、処分の対象となった物件を第三者が時効取得した場合、当該取消訴訟の訴えの利益(行政事件訴訟法9条1項)は失われるか。また、取消訴訟の提起に時効中断の効力が認められるか。
規範
1. 行政処分の取消訴訟は、処分の効果を遡及的に失わせることで侵害された権利利益の回復を図るものである。したがって、権利利益の回復が不可能となった場合には、訴えの利益が失われる。 2. 国から土地の売渡しを受けた者が10年間の短期取得時効(民法162条2項)の要件を充足する場合、事後に買収処分の取消判決が確定しても、占有の始めに遡って他人の不動産を占有していたことになり、時効取得が成立する。 3. 行政庁を被告とする取消訴訟の提起は、占有者に対する時効中断事由には当たらない。
事件番号: 昭和46(行ツ)46 / 裁判年月日: 昭和47年12月12日 / 結論: 棄却
一、自作農創設特別措置法に基づき所有土地を買収された者が買収計画または買収処分に対する取消訴訟を提起しても、右土地につき売渡の相手方のために進行する取得時効は中断されない。 二、自作農創設特別措置法に基づき所有土地を買収された者は、右土地の売渡の相手方を被告として、買収計画または買収処分の取消を条件とする原状回復の請求…
重要事実
国が自作農創設特別措置法に基づき、上告人の土地を買収し、補助参加人に売り渡した。補助参加人は昭和27年4月頃から所有の意思をもって平穏公然に占有を開始した。上告人は国(行政庁)を被告として買収計画の取消訴訟を提起したが、その間に補助参加人の占有開始から10年が経過した。補助参加人は本件訴訟において時効取得を主張している。
あてはめ
補助参加人は売渡処分により所有者になったと信じることに過失はなく、善意無過失で占有を開始したといえる。占有開始から10年が経過したことで、仮に買収処分が取り消されても、補助参加人は遡及的に時効取得の要件を満たす。上告人は行政庁を被告とする取消訴訟を提起したにすぎず、占有者である補助参加人に対し返還請求等の裁判上の請求を行っていないため、時効は中断していない。したがって、取消判決を得ても上告人が所有権を回復することは不可能である。なお、損害賠償請求のために取消判決を得る必要はないため、賠償請求の可能性は訴えの利益を基礎付けない。
結論
本件土地の所有権回復は不可能となったため、上告人の訴えは訴えの利益を欠き、却下されるべきである。
実務上の射程
行政処分の取消しによって得られる法的利益が、私法上の権利変動(時効取得)によって実質的に失われた場合の訴えの利益に関する判断枠組みとして重要である。答案上は、行訴法9条1項の「法律上の利益」の検討において、回復すべき利益の存否を論じる際に活用する。
事件番号: 昭和42(行ツ)11 / 裁判年月日: 昭和42年9月14日 / 結論: 棄却
職権調査事項に関する当事者の主張については、民訴法第一三九条の適用がない。
事件番号: 昭和27(オ)75 / 裁判年月日: 昭和28年12月25日 / 結論: 破棄自判
自作農創設特別措置法第六条の三による遡及買収計画の指示をしない旨の都道府県農業委員会の決定の取消を求める訴は、同法の廃止により、その利益が失われる。
事件番号: 昭和25(オ)383 / 裁判年月日: 昭和28年12月28日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法第三条第一項または同条第五項の特定の号に該当するものとして定められた農地買収計画を、訴願裁決で右農地は右特定の号にはあたらないが、同項の他の号に該当するものとして維持することはゆるされない。