自作農創設特別措置法第六条の三による遡及買収計画の指示をしない旨の都道府県農業委員会の決定の取消を求める訴は、同法の廃止により、その利益が失われる。
自作農創設特別措置法第六条の三による遡及買収計画の指示をしない旨の都道府県農業委員会の決定の取消を求める訴の同法廃止後の利益
自作農創設特別措置法6条の3,農地法施行法1条
判旨
行政処分の取消訴訟において、訴訟継続中に根拠法が廃止され、処分を取り消しても行政庁が当該法律に基づく新たな措置を講じることが不可能となった場合には、当該処分の取消しを求める訴えの利益は消滅する。
問題の所在(論点)
行政処分の根拠法が訴訟継続中に廃止され、行政庁が当該法に基づく権限行使を行えなくなった場合、当該処分の取消しを求める訴えの利益は認められるか。
規範
取消訴訟の提起には、当該処分を取り消すことによって回復すべき法的利益(訴えの利益)が存在することを要する。処分後にその根拠となる法制度が廃止され、処分の取消しがなされたとしても、行政庁が再度当該法に基づく公権力の行使や原状回復を行う法的権限を失った場合には、取消しを求める実効性が失われ、訴えの利益は否定される。
重要事実
上告人(知事)は、自作農創設特別措置法(以下「自創法」)6条の3に基づき、農地委員会に対して買収の指示をしない旨の決定を行った。これに対し被上告人が当該不指示決定の取消しを求めて提訴したところ、訴訟継続中に農地法施行法の施行により自創法が廃止された。これにより、同法に基づく遡及買収計画の指示制度自体が消滅した。
事件番号: 昭和45(行ツ)23 / 裁判年月日: 昭和49年12月23日 / 結論: 棄却
一、自作農創設特別措置法による買収土地を売渡の相手方が一〇年間所有の意思をもつて、平穏、公然に占有し、その占有の始め、善意、無過失であつた場合において、買収に関する処分の取消判決が確定したときは、売渡の相手方は、民法一六二条二項により右土地の所有権を時効取得する。 二、自作農創設特別措置法による買収土地を売渡の相手方が…
あてはめ
本件において、被上告人が求めているのは知事による「買収指示をしない決定」の取消しである。しかし、自創法が廃止されたことにより、仮に裁判所が当該決定を取り消したとしても、上告人(知事)にはもはや同法に基づき遡及買収計画を定めるべき旨を指示する権限も根拠も存在しない。したがって、被上告人が勝訴して処分の取消判決を得たとしても、それによって法律上の目的を達することは不可能であるといえる。
結論
被上告人の本訴請求は訴えの利益を欠くため、棄却(実質的には却下されるべきだが、本判決では請求棄却の結論を維持)される。
実務上の射程
処分後に事情が変わった場合の「狭義の訴えの利益」の典型例である。特に、法律の改廃により処分の前提となる制度自体が消滅した場合、処分を取り消す法的意味がなくなることを示す。答案では、行政事件訴訟法9条1項の「法律上の利益」の判断において、判決による権利救済の可能性が失われた場面として引用すべき判例である。
事件番号: 昭和30(オ)459 / 裁判年月日: 昭和33年4月11日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法第一九条に基く農地売渡計画に関する訴願裁決の取消を求める訴は、農地法の施行によつてその利益を失う
事件番号: 昭和27(オ)75 / 裁判年月日: 昭和29年1月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所は、判決中に明白な誤謬があるときは、職権により更正決定をすることができる。本件では、判決理由中の法令の制度に関する記述において、不要な語句が含まれていた誤りを職権で更正した。 第1 事案の概要:最高裁判所が昭和28年12月25日に言い渡した自作農創設特別措置法に基づく指示をしない旨の決定取消…
事件番号: 昭和25(オ)383 / 裁判年月日: 昭和28年12月28日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法第三条第一項または同条第五項の特定の号に該当するものとして定められた農地買収計画を、訴願裁決で右農地は右特定の号にはあたらないが、同項の他の号に該当するものとして維持することはゆるされない。
事件番号: 昭和26(オ)3 / 裁判年月日: 昭和29年2月25日 / 結論: 破棄差戻
自作農創設特別措置法第三条第一項第一号によつて準地区として指定すべき区域について指定を行わず、その区域内の農地を不在地主の小作地として買収することは違法である。