行政事件訴訟法三六条にいう「目的を達することができない」とは、処分の無効等を前提とする現在の法律関係に関する訴の形態を法律上とることができないことをいい、具体的に勝訴の見込みがないことまでをもいうものではない。
行政事件訴訟法三六条にいう「目的を達することができない」の意義
行政事件訴訟法36条
判旨
行政事件訴訟法36条にいう「現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができない」とは、処分の無効を前提とする当事者訴訟や民事訴訟によっては、本来、処分による不利益を排除できないことをいう。法律上そのような訴訟形態が可能であれば、勝訴の見込みの有無にかかわらず無効確認の訴えを提起することはできない。
問題の所在(論点)
行政事件訴訟法36条(無効等確認の訴えの原告適格)にいう「現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができないもの」の意義、および民事訴訟において勝訴の見込みがない場合でも補充性の要件を満たさない(=無効確認の訴えを提起できない)といえるか。
規範
行政事件訴訟法36条に定める無効等確認の訴えの補充性に関し、「現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができない」とは、処分の無効を前提とする当事者訴訟または民事訴訟によって、当該処分から生じている不利益を本来的に排除することができないことをいう。ここでいう「可能」とは、法律上の訴訟形態として選択可能であることを指し、具体的な勝訴の見込みの有無は判断に影響しない。
重要事実
上告人らの所有地が、東京都知事(被上告人)により自作農創設特別措置法に基づき買収され、第三者に売り渡されて所有権移転登記がなされた。上告人らは、当該買収処分が無効であると主張し、その無効確認を求めて出訴した。これに対し、買収処分の無効を前提として、現在の権利関係の主体である第三者に対する土地所有権確認や抹消登記請求等の民事訴訟が可能であるかが争点となった。
事件番号: 昭和42(行ツ)79 / 裁判年月日: 昭和45年2月17日 / 結論: 棄却
民法一八五条にいう「新権原」の発生を主張するについて、占有者は、その取得につき登記その他の対抗要件を必要としない。 (参考) 一審、札幌地裁昭和三五年(行)第七号、同年(ワ)第三〇八号 昭和四〇年九月二四日判決(訟務月報一二巻二号二六七頁)
あてはめ
買収処分が無効であれば、土地の所有権は依然として上告人らに帰属する。したがって、上告人らは現在の所有者とされる第三者に対し、土地所有権確認、土地明渡し、所有権移転登記の抹消登記手続請求等の民事訴訟を提起することが法的に可能である。たとえ相手方が時効を援用すること等により、上告人らに勝訴の見込みが具体的に乏しいとしても、それは補充性を肯定する理由にはならない。民事訴訟という代替的・直接的な紛争解決手段が法的に存在する以上、無効確認の訴えによる必要はないと解される。
結論
本件買収処分の無効確認の訴えは、民事訴訟によって目的を達することができる場合に該当するため、行政事件訴訟法36条の要件を欠き不適法である。
実務上の射程
処分の無効を確認するよりも、その処分によって形成された現在の法律関係(所有権の帰属等)を民事訴訟等で争う方が、紛争の直接的解決に資するという「補充性」の原則を明確にしたもの。実務上、処分後の転売や権利変動がある場合は、まず現在の権利者に対する民事訴訟の可否を検討すべきであり、勝訴可能性の低さを理由に補充性を回避することはできない点に注意が必要である。
事件番号: 昭和38(オ)355 / 裁判年月日: 昭和38年12月19日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法第五条第四号の規定による主務大臣の指定する土地に関する件(昭和二三年一月二九日農林省告示第一〇号)は、耕地整理法に基づき耕地整理を施行した土地で宅地としての利用を増進する効果を伴つたもののうち、その施行が都市計画法施行以前に設立された耕地整理組合によつてなされたものに限り、これをもつて自作農創設特別…
事件番号: 昭和37(オ)1403 / 裁判年月日: 昭和39年10月20日 / 結論: 破棄自判
自作農創設特別措置法により買収農地の売渡を受けた者が当該農地の所有権を時効取得したときは、右農地の被買収者は、その買収処分の無効確認を求める訴の利益を有しない。
事件番号: 昭和31(オ)816 / 裁判年月日: 昭和35年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民事判決の既判力は当事者以外には及ばず、行政庁が確定判決と異なる判断をしても直ちに違法とはならない。また、買収処分の後の売渡処分の違法は、買収処分自体の効力に影響を及ぼさない。 第1 事案の概要:上告人は、農地買収処分等に関して、既になされた民事判決の判断内容と行政庁の判断が異なること、不動産登記…
事件番号: 昭和35(オ)1265 / 裁判年月日: 昭和37年4月17日 / 結論: 棄却
買収適格地認定の根拠法条の記載を欠く農地の買収計画または買収処分も、当然無効ではない。