買収適格地認定の根拠法条の記載を欠く農地の買収計画または買収処分も、当然無効ではない。
買収適格地認定の根拠法条の記載を欠く農地の買収計画または買収処分は、当然無効か
行政事件訴訟特例法1条,自作農創設特別措置法3条1項,自作農創設特別措置法3条5項,自作農創設特別措置法6条5項,自作農創設特別措置法9条2項
判旨
行政処分において根拠となる事実が買収計画樹立時に確定している必要はあるが、その根拠規定の詳細な号数等の記載は買収計画書等の必要的記載事項ではなく、欠落があっても当然に無効とはならない。
問題の所在(論点)
行政処分の根拠規定の表示において、具体的な号数等の記載が欠けている場合、当該処分は当然に無効となるか。具体的には、買収計画書等における根拠規定の摘示の程度と処分の効力が問題となる。
規範
行政処分の根拠となる事実が法的な買収適格性を備えていることは必要であるが、その具体的な分類(根拠規定の号数等)が買収計画書または買収令書の形式的な記載要件であるとは解されない。したがって、書面上の記載から直ちに具体的根拠条項を特定できないとしても、その一事をもって当該処分が当然無効になるものではない。
重要事実
自作農創設特別措置法に基づき農地の買収処分が行われた際、買収計画書および買収令書には「同法3条」とのみ記載され、不在地主の小作地であることを示す「同条1項1号」という具体的な号数の記載が欠落していた。上告人は、この記載の不備を理由に買収処分が無効であると主張して争った。
事件番号: 昭和38(オ)355 / 裁判年月日: 昭和38年12月19日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法第五条第四号の規定による主務大臣の指定する土地に関する件(昭和二三年一月二九日農林省告示第一〇号)は、耕地整理法に基づき耕地整理を施行した土地で宅地としての利用を増進する効果を伴つたもののうち、その施行が都市計画法施行以前に設立された耕地整理組合によつてなされたものに限り、これをもつて自作農創設特別…
あてはめ
本件において、買収計画は当該農地が不在地主の小作地であるという事実に基づいて樹立されており、買収適格地の事実は確定していたといえる。同法3条との記載があれば、具体的な号数(1項1号)の記載を欠いていたとしても、それは書面の記載要件に違反するものではない。実体的な買収要件を充足している以上、形式的な記載の不備のみをもって処分を当然無効と解することはできない。
結論
買収計画書等に具体的な号数の記載を欠いていても、処分が当然に無効となるものではない。本件買収処分は有効である。
実務上の射程
行政処分の理由提示や根拠規定の提示の不備が、直ちに処分の無効事由(重大かつ明白な瑕疵)にはならないことを示す。処分の根拠となる実体事実が確定しており、相手方に不測の不利益を与えない程度の表示があれば、形式的な記載の不備は処分の効力に影響しないという判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和38(オ)1145 / 裁判年月日: 昭和40年9月2日 / 結論: 棄却
一 自作農創設特別措置法第九条第一項但書による農地買収令書の交付に代わる公告に、令書の交付ができない理由として掲げたところが誤りであつても、客観的に右令書の交付のできない事由が存する以上、その公告の効力を害するものではない。 二 自作農創設特別措置法第九条第一項但書による農地買収令書の交付に代わる公告に、法定の公告事項…
事件番号: 昭和30(オ)385 / 裁判年月日: 昭和32年1月31日 / 結論: 棄却
農地買収計画に対する異議決定および訴願裁決に理由の記載がなくても、右計画に基く農地買収処分は無効ではない。
事件番号: 昭和30(オ)419 / 裁判年月日: 昭和32年11月1日 / 結論: 棄却
一 自作農創設特別措置法第二条第二項にいう「耕作の業務を営む者」とは、耕作経営の主体を指すものであつて、その耕作の規模が零細であることまたは農業以外に兼業を有することを妨げない。 二 買収令書に、買収目的地の表示として、一筆の土地の一部を単に地積を表示して掲げているに過ぎない場合においても、買収手続当時の事情の下で、一…
事件番号: 昭和33(オ)5 / 裁判年月日: 昭和36年3月24日 / 結論: 棄却
買収計画の縦覧期間が一日不足していたということだけでは、右計画に基く買収処分は当然無効となるものではない。