買収計画の縦覧期間が一日不足していたということだけでは、右計画に基く買収処分は当然無効となるものではない。
買収計画の縦覧期間の不足は右計画に基く買収処分の当然無効の原因となるか。
自作農創設特別措置法6条5項,行政事件訴訟特例法1条
判旨
行政処分に手続き上の瑕疵や事実誤認等の誤りがあったとしても、それが重大かつ明白な瑕疵といえない限り、当該処分が当然に無効となるものではない。
問題の所在(論点)
行政処分(農地買収処分)において、縦覧期間の不足、面積計算の基礎事実の誤り、目的物の表示の誤謬といった瑕疵が認められる場合に、当該処分は当然無効となるか。
規範
行政処分の無効事由は、当該処分に重大かつ明白な瑕疵がある場合に限られる。手続き上の期間不足や、処分の基礎となる事実認定の軽微な誤り、あるいは目的物の表示の誤謬があったとしても、それらが直ちに処分を当然無効ならしめるものではない。
重要事実
自作農創設特別措置法に基づく農地買収処分において、①買収計画の縦覧期間の公告に関し、初日不算入の原則に照らすと法定期間に一日不足していた。また、②保有限度外面積の計算の基礎となる自作地認定に誤差が生じていたほか、③買収目的地の表示に一部誤り(誤謬)が存在していた。上告人は、これらの瑕疵を理由に買収処分の当然無効を主張した。
事件番号: 昭和33(オ)91 / 裁判年月日: 昭和35年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の取消事由にすぎない瑕疵がある場合であっても、その瑕疵が処分を当然無効ならしめるほどの重大かつ明白なものでない限り、当該処分は当然には無効とならない。 第1 事案の概要:上告人は、農地買収処分に以下の無効原因があると主張した。(1)県係員の虚偽指示に基づく買収計画、(2)異議却下時の農地委…
あてはめ
①縦覧期間の不足について、初日不算入の原則からわずか一日の不足が認められるが、この程度の期間不足は処分の効力を否定するほどの重大な瑕疵とはいえない。②面積計算の誤差について、原審が認定した事実に重大かつ明白な瑕疵があるとはいえず、計算結果に多少の誤差が生じたとしても無効原因には当たらない。③目的地の表示の誤謬についても、認定された諸事情の下では当然無効の原因となるような瑕疵とは認められない。
結論
本件買収処分に当然無効の原因となる瑕疵は認められず、上告を棄却する。
実務上の射程
行政処分の取消訴訟の出訴期間を徒過した後に、処分の効力を争うための「当然無効」の主張に対する判断枠組みとして機能する。軽微な手続違反や事実誤認は、取消事由にはなり得ても無効事由にはならないという実務上の原則(重大明白説の系譜)を確認する事案として活用できる。
事件番号: 昭和28(オ)1266 / 裁判年月日: 昭和33年4月30日 / 結論: 棄却
農地所有権の移転後、移転登記未経由の間に登記簿上の所有名義人を所有者としてなされた農地買収処分は、当然無効と解すべきではない
事件番号: 昭和36(オ)732 / 裁判年月日: 昭和38年12月24日 / 結論: 棄却
一 農地買収の時期が売渡の時期より後であつても、買収処分は無効とはいえない。 二 農地の買収、売渡計画の買収、売渡の時期の変更につき公告手続を経ないでした買収処分も無効ではない。
事件番号: 昭和36(オ)1320 / 裁判年月日: 昭和38年12月26日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】行政処分が当然無効となるための「瑕疵の明白性」は、処分の外形上客観的に、誤認が一見して看取できるか否かにより決すべきであり、行政庁の調査怠慢の有無は直接関係しない。 第1 事案の概要:行政庁が、被上告人の自作地である農地を小作地であると誤認し、農地買収処分を行った事案。原審は、本件農地が実際には自…
事件番号: 昭和36(オ)1205 / 裁判年月日: 昭和38年2月22日 / 結論: 棄却
耕作地を小作地と誤認したため保有面積の計算を誤つてした農地買収処分であつても、その瑕疵が明白なものといえない以上、当該買収処分は無効とはいえない。