一 自作農創設特別措置法第二条第二項にいう「耕作の業務を営む者」とは、耕作経営の主体を指すものであつて、その耕作の規模が零細であることまたは農業以外に兼業を有することを妨げない。 二 買収令書に、買収目的地の表示として、一筆の土地の一部を単に地積を表示して掲げているに過ぎない場合においても、買収手続当時の事情の下で、一筆の土地のうち被買収者が小作に付している特定の部分を買収の目的とする趣旨であることが関係当事者に疑を容れない程度に看取され得る場合には、右の表示をもつて、買収目的地が買収令書において特定されていると、解するに妨げがない。
一 自作農創設特別措置法第二条第二項にいう「耕作の業務を営む者」の意義 二 買収の目的地が買収令書において特定されているものと認むべき事例
自作農創設特別措置法2条,自作農創設特別措置法9条,自作農創設特別措置法6条5項
判旨
行政処分の目的物の表示が、買収令書において一筆の土地の一部について単に地積で示されているに過ぎない場合であっても、当時の事情からその範囲が関係当事者間に疑いを容れない程度に特定されていると看取し得るならば、当該処分は有効である。また、仮に特定に不完全な点があるとしても、その程度の瑕疵は直ちに処分の当然無効事由とはならない。
問題の所在(論点)
行政処分(農地買収処分)において、買収令書上の目的物の表示が一筆の土地の一部の地積表示にとどまる場合、目的物の特定を欠くものとして当該処分は違法または無効となるか。
規範
行政処分の目的物は原則として処分書において特定されていなければならないが、文字上の表示が不十分であっても、手続当時の諸事情を総合し、その表示が目的物の特定の一部を指すものであることが関係当事者間に疑いを容れない程度に客観的に看取し得る場合には、目的物は特定されているものと解される。
重要事実
事件番号: 昭和30(オ)920 / 裁判年月日: 昭和31年12月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分が当然無効とされるためには、その瑕疵が重大であるだけでなく、かつ客観的に明白であることを要する。本件買収処分については、瑕疵が重大であっても明白とは認められないため、当然無効とはならない。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法に基づき、行政庁が本件農地の買収処分を行った。しかし、当該処分…
自作農創設特別措置法に基づく農地買収処分において、買収令書には一筆の土地の一部について単に地積のみが記載されていた。しかし、上告人は不在地主であり、その所有する小作地はすべて買収されるべき地位にあった。また、本件土地のうち、上告人が実際に小作に付していた部分は特定されており、当時の状況からすれば、どの範囲が買収対象であるかは関係当事者にとって明白であった。
あてはめ
本件では、令書上の表示自体は地積のみであったが、上告人が不在地主であり小作地すべてが買収対象であったという背景がある。このような買収手続当時の事情の下では、一筆の土地のうち実際に小作に付されていた特定部分を買収する趣旨であることは、関係当事者間に疑いを容れない程度に看取し得たといえる。したがって、目的物は法的に特定されていたと評価できる。仮に特定が不完全で瑕疵があるとしても、右事情下では重大かつ明白な瑕疵とはいえず、当然無効とはならない。
結論
本件買収処分は、目的物の特定を欠くものとはいえず有効である。したがって、買収処分の無効を前提とする上告人の主張は採用できない。
実務上の射程
行政処分の明確性の原則に関する判断枠組みとして活用できる。特に、処分の文言が抽象的・不十分であっても、当時の状況や当事者の認識から一義的に特定可能であれば有効性を維持できるとする「実質的な特定」の許容範囲を示す事例である。また、特定不十分の瑕疵が直ちに当然無効(重大明白な瑕疵)には繋がらないとする無効論の文脈でも引用可能である。
事件番号: 昭和38(オ)508 / 裁判年月日: 昭和39年7月14日 / 結論: 棄却
土地の一部に対する農地買収処分において、買収令書上は、分筆、地目変換前の土地台帳の表示に基づき買収の対象及び範囲の地番、地目、地積を表示し、かつ土地の一部買収であることを摘要欄に付記するだけで、買収部分の図面の添付もない場合でも、これら記載から推して関係当事者が買収部分を容易に看取することができ、ことに処分の相手方にお…
事件番号: 昭和39(行ツ)21 / 裁判年月日: 昭和39年10月13日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法第五条第四号により買収除外の指定を受けた区域内にある小作地であつても、これを同法第三条第一項第二号にいう在村地主の保有小作面積に算入することは許される。
事件番号: 昭和27(オ)1132 / 裁判年月日: 昭和32年9月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の買収処分において、登記簿上の名義人を所有者としてなされた処分は、異議申立や出訴期間内に行われた争訟によって是正されない限り、直ちに当然無効とはならない。 第1 事案の概要:政府が自作農創設特別措置法に基づき農地の買収処分を行った際、真実の所有者ではなく登記簿上の名義人を相手方として買収計画お…
事件番号: 昭和35(オ)1265 / 裁判年月日: 昭和37年4月17日 / 結論: 棄却
買収適格地認定の根拠法条の記載を欠く農地の買収計画または買収処分も、当然無効ではない。