一 自作農創設特別措置法第九条第一項但書による農地買収令書の交付に代わる公告に、令書の交付ができない理由として掲げたところが誤りであつても、客観的に右令書の交付のできない事由が存する以上、その公告の効力を害するものではない。 二 自作農創設特別措置法第九条第一項但書による農地買収令書の交付に代わる公告に、法定の公告事項である買収地の地番、地図、面積を掲げる代りに「県農地課備付の買収計画書記載の通り」と記載した場合においても、それら事項を記載した買収計画書がすでに当該被買収者に交付されているときは、右公告の不備は、その公告の効力に影響しない。
一 農地買収令書の交付できない理由として誤つた事実を掲げた令書交付に代わる公告の効力 二 「県農地課備付買収計画書記載の通り」と記載して公告事項の一部を省略した農地買収令書の交付に代わる公告が有効とされた事例
自作農創設特別措置法9条
判旨
行政処分の告知方法としての公告において、記載内容に不備があったとしても、被買収者が当該処分を具体的に知る機会が十分に確保されており、救済の機会を失う不利益がない場合には、当該公告は有効であり処分の効力に影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
行政処分の効力発生要件としての告知につき、公告の記載内容に法定の事項(買収対象の表示)が欠けている場合、当該公告および処分は無効となるか。
規範
行政処分の告知としてなされる公告は、原則として特定人に対する告知方法としての性質を有する。したがって、公告の記載内容に一部不備(対象物件の表示欠如等)があったとしても、客観的に交付不能な事由が存在し、かつ、被処分者が他の手段を通じて処分の内容を具体的に知る機会が確保されているなど、救済の機会を失う不利益を被らない特段の事情がある場合には、当該公告の不備は処分の効力に影響しない。
重要事実
事件番号: 昭和38(オ)508 / 裁判年月日: 昭和39年7月14日 / 結論: 棄却
土地の一部に対する農地買収処分において、買収令書上は、分筆、地目変換前の土地台帳の表示に基づき買収の対象及び範囲の地番、地目、地積を表示し、かつ土地の一部買収であることを摘要欄に付記するだけで、買収部分の図面の添付もない場合でも、これら記載から推して関係当事者が買収部分を容易に看取することができ、ことに処分の相手方にお…
農地買収令書の交付事務に際し、上告人が令書の受領を拒絶したため、知事は自作農創設特別措置法に基づき公告による告知を行った。この公告には、同法が要求する買収対象の地番、地目、面積等の記載がなく、「買収計画書記載の通り」とのみ記されていた。しかし、実際には当該買収計画書はあらかじめ上告人に交付されており、上告人は買収対象を具体的に把握し得る状況にあった。
あてはめ
本件公告には地番等の直接記載がないが、これは一般周知目的ではなく上告人への告知を目的とする。上告人は買収令書の受領を拒絶しており、客観的に公告による告知が必要な状況にあった。また、上告人には事前に買収対象が明記された買収計画書が交付されており、上告人は処分の内容を認識し、不服申し立て等の救済手段を講じる機会を失っていない。よって、本件公告の不備は実質的な不利益をもたらすものではなく、処分の無効原因とはならない。
結論
本件公告は有効であり、これに基づく農地買収処分に違法はない。上告を棄却する。
実務上の射程
行政処分の告知に瑕疵がある場合の有効性を、処分の性質(特定人宛てか不特定多数宛てか)と相手方の実質的防御権(救済の機会)の観点から判断する枠組み。告知の形式的瑕疵を理由とする無効主張を制限する際の有力な論拠となる。
事件番号: 昭和35(オ)1265 / 裁判年月日: 昭和37年4月17日 / 結論: 棄却
買収適格地認定の根拠法条の記載を欠く農地の買収計画または買収処分も、当然無効ではない。
事件番号: 昭和38(オ)824 / 裁判年月日: 昭和40年8月17日 / 結論: 棄却
一 自作農創設特別措置法による未墾地買収令書の交付に代わる公告において、地番の誤記等判示の事情があるため被買収地の表示が第三者の所有地を表示したものとみられ、それが容易に認識できる単純な地番を誤記とはいえないときは、右公告による買収処分は重大かつ明白な瑕疵を有し無効と解するのが相当である。 二 知事が所有者の開墾中の土…
事件番号: 昭和36(オ)1189 / 裁判年月日: 昭和38年5月21日 / 結論: 棄却
自創法第三条の規定による農地の買収において、買収令書は作成されたが交付されなかつたという場合には、行政処分としては成立しても、効力を生ずるに由ない無効の処分と解するのが相当である。
事件番号: 昭和30(オ)419 / 裁判年月日: 昭和32年11月1日 / 結論: 棄却
一 自作農創設特別措置法第二条第二項にいう「耕作の業務を営む者」とは、耕作経営の主体を指すものであつて、その耕作の規模が零細であることまたは農業以外に兼業を有することを妨げない。 二 買収令書に、買収目的地の表示として、一筆の土地の一部を単に地積を表示して掲げているに過ぎない場合においても、買収手続当時の事情の下で、一…