自創法第三条の規定による農地の買収において、買収令書は作成されたが交付されなかつたという場合には、行政処分としては成立しても、効力を生ずるに由ない無効の処分と解するのが相当である。
農地買収令書の不交付は買収処分の無効をきたすか。
自作農創設特別措置法9条1項,行政事件訴訟特例法1条
判旨
行政処分が成立していても、相手方に対する令書の交付等の告知が全くなされなかった場合には、当該処分は効力を生じず無効である。
問題の所在(論点)
行政庁が処分を決定し書面を作成したものの、その書面が相手方に交付されなかった場合、当該行政処分の効力はどうなるか。
規範
行政処分は、行政庁の内部的手続のみならず、その内容が外部に対して表示され、相手方に告知されることを要する。したがって、法令により令書の交付が規定されている場合において、当該令書が一切交付されなかったときは、処分として成立はしていても、効力を発生し得ない当然無効のものとなる。
重要事実
上告人(知事)は、自作農創設特別措置法3条に基づき、農地の買収処分を決定し買収令書を作成した。しかし、当該買収令書は被上告人ら(相手方)に対し、遂に交付されることがなかった。被上告人らは、当該買収処分の無効を主張して本訴を提起した。
事件番号: 昭和36(オ)1021 / 裁判年月日: 昭和39年7月14日 / 結論: 破棄差戻
一 農地買収処分の無効確認訴訟は、処分庁たる県知事を被告として提起することができる。 二 農地買収処分の相手方が買収令書の受領を拒否しても、右処分を了知しうべき状態におかれたものとして、右処分の効力を認めることができる。
あてはめ
本件における農地買収処分は、知事による買収令書の作成という内部的な決定手続は行われている。しかし、原審の認定によれば、行政処分の効力発生要件である買収令書の交付が一切行われていない。処分の存在が相手方に公的に告知されていない以上、外部に対する効力を認めることはできない。よって、本件処分は効力を生ずるに由ない無効なものと評価される。
結論
本件農地買収処分は、買収令書が交付されなかったため、効力を生じない無効な処分である。
実務上の射程
行政処分の効力発生時期(告知・到達)に関する基本判例である。行政庁の意思が外部に客観的に示されることが必要であることを示しており、答案上は処分の成立要件や効力発生要件を論ずる場面で活用できる。重大かつ明白な瑕疵の議論とは別に、そもそも告知が欠如している場合に『無効』とする論理として重要である。
事件番号: 昭和38(オ)210 / 裁判年月日: 昭和39年2月14日 / 結論: 棄却
原判決が農地買収計画が失効したと認定したのは不合理ではない。
事件番号: 昭和38(オ)1145 / 裁判年月日: 昭和40年9月2日 / 結論: 棄却
一 自作農創設特別措置法第九条第一項但書による農地買収令書の交付に代わる公告に、令書の交付ができない理由として掲げたところが誤りであつても、客観的に右令書の交付のできない事由が存する以上、その公告の効力を害するものではない。 二 自作農創設特別措置法第九条第一項但書による農地買収令書の交付に代わる公告に、法定の公告事項…
事件番号: 昭和32(オ)1190 / 裁判年月日: 昭和33年11月4日 / 結論: 破棄差戻
広告手続を経ない農地買収計画は外部に対して効力を有しない。
事件番号: 昭和36(オ)1320 / 裁判年月日: 昭和38年12月26日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】行政処分が当然無効となるための「瑕疵の明白性」は、処分の外形上客観的に、誤認が一見して看取できるか否かにより決すべきであり、行政庁の調査怠慢の有無は直接関係しない。 第1 事案の概要:行政庁が、被上告人の自作地である農地を小作地であると誤認し、農地買収処分を行った事案。原審は、本件農地が実際には自…