主要争点以外の事情の説明にわたる主張を判決事実摘示中に掲げなくても違法とはいえない。
主要争点以外の事情の説明にわたる主張を判決事実摘示中に掲げることの要否
判旨
弁論主義の適用範囲は、権利の発生、変更又は消滅という法律効果の判断に直接必要な事実(主要事実)に限られ、主要事実を推認させるための間接事実や、事実認定の資料となる補助事実には及ばない。裁判所は、当事者が主張していない間接事実や補助事実(事情)についても、証拠に基づき自由に認定することができる。
問題の所在(論点)
裁判所が当事者の主張していない「土地の引渡」という事実を認定の基礎としたことは、弁論主義に反するか。特に、主要事実以外の「事情(間接事実・補助事実)」について当事者の主張を待たずに認定することの可否が問題となる。
規範
弁論主義が妥当する対象は主要事実に限定される。主要事実とは、法律効果の発生に直接必要な要件事実を指す。これに対し、主要事実の存否を推認させるにすぎない間接事実や、証拠の証明力に影響を与える補助事実については、裁判所は当事者の主張に拘束されず、証拠資料に基づき職権で認定することが許される。
重要事実
上告人と参加人との間で、本件土地が昭和20年11月23日当時「自作地」であったか「小作地」であったかが争点となった。原審は、同年9月15日頃に土地の合意解約が成立したことを理由に、本件土地は基準日において自作地であったと判断した。その際、原審は当事者が主張していない「土地の引渡があった事実」を認定の基礎としたため、上告人は弁論主義違反であると主張して上告した。
あてはめ
本件の主要争点は、基準日当時において本件土地が自作地であったか否かという点にある。裁判所が認定した「土地の引渡があったという事実」は、合意解約が成立し自作地となったという主要事実を認定するための「単なる事情(間接事実)」にすぎない。したがって、弁論主義の適用外であり、当事者の主張がなくても証拠に基づき認定することができる。また、土地の一部についての耕作事実から全部の引渡を推認することも、証拠に基づく合理的な推断として許容される。
事件番号: 昭和30(オ)670 / 裁判年月日: 昭和32年2月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実認定における証拠の取捨選択は裁判所の自由裁量に委ねられており、引用された証拠から認定事実が導き出せる限り、採証法則違反の違法は認められない。 第1 事案の概要:農地遡及買収の基準日(昭和20年11月23日)時点における本件農地の所有者が誰であったかが争点となった事案である。原審は、証拠に基づき…
結論
主要事実以外の事情(間接事実等)については、当事者の主張を待たずに裁判所が認定しても弁論主義違反とはならない。したがって、原判決に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
弁論主義の対象を「主要事実」に限定する主要事実説を確立した極めて重要な判例である。答案作成上は、問題となっている事実が「法律効果の発生に直接必要な事実(主要事実)」か、あるいは「主要事実を推認するにすぎない事実(間接事実)」かを区別し、後者であれば裁判所の自由な認定が可能であると論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和30(オ)369 / 裁判年月日: 昭和32年7月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁論主義の適用範囲は、権利の発生、変更、消滅という法律効果の判断に直接必要な「主要事実」に限定され、その前提となる間接事実や補助事実には及ばない。 第1 事案の概要:山林の所有権確認訴訟において、被上告人が所有権を承継取得した経緯(前々所有者の所有権取得に関する事実)について、原審が被上告人の主張…
事件番号: 昭和29(オ)894 / 裁判年月日: 昭和31年5月25日 / 結論: 棄却
いわゆる間接事実についての自白は、裁判所を拘束しない。
事件番号: 昭和31(オ)165 / 裁判年月日: 昭和35年3月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁論主義が適用されるのは主要事実に限られ、間接事実については裁判所が当事者の主張に拘束されず、証拠に基づいて当事者の主張と異なる事実を認定しても違法ではない。 第1 事案の概要:上告人は、原審が当事者の主張と異なる事実を認定した点に違法があると主張して上告した。具体的には、原判決が認定した事実の一…