判旨
登記の抹消手続請求が適法に認められるためには、請求主体が当該不動産について抹消登記請求権を有している必要があり、自己の権利を何ら主張しない者による請求は不適法として排斥される。
問題の所在(論点)
自己の権利に基づかず、単に登記が無効であることのみを理由として抹消登記手続を請求することは、当事者適格または請求権の存否の観点から認められるか。
規範
登記が実体関係に適合せず無効である場合であっても、当該登記の抹消手続を求めることができるのは、その不動産について実体上の権利を有するか、または法令等により当該登記の抹消を請求する正当な権限(抹消登記請求権)を有する者に限られる。
重要事実
上告人Aは、被上告人名義の所有権移転登記について、売買が無効であることを理由にその抹消登記手続を求めて提訴した。しかし、Aは訴訟の過程で、本件不動産が第三者Bの所有であることを確認する旨の主張を陳述から除外した。その結果、Aは本件土地建物に関して自己がいかなる権限(所有権その他の実体法上の権利)を有しているかを主張・立証しないまま、単に登記が無効であることのみを理由に抹消を求める形となった。
あてはめ
上告人の請求の趣旨は、被上告人名義の登記が無効であるから抹消せよという点に帰着する。しかし、上告人は「本件不動産に関して何ら自己の権限を主張していない」状態にある。登記抹消請求権は、当該登記を抹消することによって直接法的な利益を受ける実体法上の権利者に帰属するものである。したがって、自己の権利を主張せず、単に他人の権利を目的とする登記の無効を主張して抹消を求めることは、抹消登記請求権を欠くものといえる。
結論
上告人は本件不動産について自己の権限を主張していない以上、抹消登記請求権を有さず、その請求を排斥した原判決の結論は正当である。
事件番号: 昭和32(オ)150 / 裁判年月日: 昭和35年10月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】処分禁止の仮処分債権者は、被保全権利である所有権に基づく給付請求権が認められない場合には、仮処分執行前に当該不動産を譲り受けた者に対して登記の欠缺を主張する正当な利益を有しない。 第1 事案の概要:上告会社(債権者)は、D(債務者)との建築完成時の所有権移転特約を根拠に本件建物の所有権を主張し、D…
実務上の射程
抹消登記請求における「原告適格(請求権者)」の確定に関する。答案上は、登記請求権の発生原因(物権的請求権としての抹消請求等)を明示し、原告がその実体権利を有していることを要件として論じる際に、本判例をその根拠(裏返し)として活用できる。自己の権利に基づかない「無効登記の抹消」のみの主張は認められないことを示す射程を持つ。
事件番号: 昭和34(オ)627 / 裁判年月日: 昭和35年8月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地所有権確認の訴えにおいて行政庁は被告適格を有さず、また、所有権に基づく登記抹消請求は登記簿上の権利者を被告とすべきであって、登記名義人でない国に対し行政庁を介した抹消手続を求めることはできない。 第1 事案の概要:上告人(原告)らは、本件土地の所有権が自己にあることを主張し、被上告人である国に…
事件番号: 昭和33(オ)720 / 裁判年月日: 昭和35年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】相続による不動産の取得も、対抗問題(民法177条)となり得るが、相手方がその権利取得の事実を争わない場合には、登記の欠缺を理由に権利取得を否定することはできない。 第1 事案の概要:被上告人らは、共同相続を原因として本件山林の共有権を取得した。これに対し上告人は、被上告人らが共有権を取得した事実自…
事件番号: 昭和34(オ)960 / 裁判年月日: 昭和35年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の共有者は、保存行為として、共有不動産について無断でなされた不実の登記の抹消を単独で請求することができる。 第1 事案の概要:上告人らは、本件家屋が亡父Dの新築所有にかかり、その死亡により共同相続人である上告人ら両名の共有に属するものであると主張した。これに対し、被上告人B1は無断で自己名義…
事件番号: 昭和30(オ)90 / 裁判年月日: 昭和32年3月8日 / 結論: 棄却
一村内の部落が、財産を有せず、且つ営造物を設けていないときは、民訴四五条の当事者能力を有しない。