判旨
支配人選任の事実は、その登記がない限り営業主から善意の第三者に対抗することはできないが、第三者の側から当該事実を主張して営業主に対抗することは妨げられない。
問題の所在(論点)
商法上の登記事項(旧商法12条、現行商法9条1項)が登記されていない場合において、第三者の側からその未登記の事実を主張して営業主に責任を問い得ることの可否(不実の登記の反対解釈の限界)。
規範
商法上の登記すべき事項(支配人の選任等)について、登記前においては、営業主は善意の第三者に対してその事項の発生を対抗することができない。しかし、この規定は第三者保護の趣旨であるから、第三者の側から未登記の事実を援用し、営業主に対してその効力を主張することは認められる。
重要事実
上告人(営業主)は、Dを支配人に選任していたが、その旨の登記は未了であった。被上告人(第三者)は、Dが支配人として有する権限に基づいて行われた行為につき、支配人選任の事実を主張して上告人に対し責任を追及した。これに対し上告人は、登記がないことを理由に支配人選任の事実を対抗できないと争った。
あてはめ
支配人選任の登記は、本来営業主が第三者に対して支配人の存在を公証するためのものである。登記がない場合に「対抗できない」とされるのは、あくまで第三者の信頼を保護するため営業主側の主張を制限する趣旨である。本件において、被上告人は支配人選任の事実を認めてこれを主張している。第三者が自らその事実を認めて権利を主張することを妨げる理由はない。したがって、被上告人がDの支配人としての権限を主張し、原審がこれを認めたことに違法はない。
結論
第三者は、支配人選任の登記がなくても、その事実を主張して営業主に対抗することができる。
実務上の射程
商法9条1項(旧12条)の「対抗することができない」は、登記義務者側からの主張を制限するものであり、第三者からの援用を妨げないという「相対的効力」を認めたもの。実務・答案上、未登記の事実(支配人選任、代表取締役の退任等)を第三者が有利に利用する場合の根拠となる。
事件番号: 昭和38(オ)409 / 裁判年月日: 昭和40年10月7日 / 結論: 棄却
他人の立木を過失により自己の立木と信じ不法伐採者に対し占有移転禁止の仮処分をした者が伐採者から示談金を受取つて仮処分を解いた場合には、該立木の所有者に対し不法行為が成立する。