判旨
農地の売買契約において、知事の許可が得られた場合を条件とする将来の所有権移転登記手続請求は、義務者が許可申請への協力を拒否している以上、将来の給付の訴えを提起する間に合わせがあり適法である。
問題の所在(論点)
農地法上の許可を停止条件とする将来の所有権移転登記手続請求について、将来の給付の訴えとして「あらかじめその請求をする必要」が認められるか。
規範
将来の給付の訴え(民事訴訟法135条)が認められるためには、請求権発生の基礎となる事実関係が既に存在し、その継続が期待できること、および、あらかじめその請求をする必要があること(「あらかじめその請求をする必要があるとき」)を要する。義務者が債務の履行をあらかじめ拒絶している場合には、将来の義務発生時においても自発的な履行を期待し難いため、あらかじめ請求する必要性が認められる。
重要事実
上告人(売主)と被上告人(買主)は、農地の売買契約を締結し、同時に知事の許可を得る手続に協力する特約を結んだ。しかし、上告人は当該特約の履行を拒否し、許可申請に協力しない態度を示した。そのため、被上告人は、知事の許可があった場合を条件として、将来の所有権移転登記手続を求める訴えを提起した。
あてはめ
本件において、上告人は知事の許可を得るための協力義務という特約の履行を現に拒否している。このような訴訟の経過に照らせば、将来知事の許可が得られたとしても、上告人が自発的に所有権移転登記手続に協力しないおそれがあるといえる。また、登記義務発生の原因となる売買契約という基礎的事象は既に存在している。したがって、条件が成就した際の履行を確保するため、現時点で請求を認容する必要性が認められる。
結論
知事の許可があった場合を条件とする所有権移転登記手続請求は、将来の給付の訴えとして適法であり、容認されるべきである。
事件番号: 昭和36(オ)775 / 裁判年月日: 昭和38年11月12日 / 結論: 破棄自判
知事の許可を条件とする農地の売買契約において、これを転売したときには売主は直接転買のために右許可申請手続をする旨の合意をしても、右合意はその効力を生じない。
実務上の射程
農地売買など、第三者の行政処分を条件とする登記請求において、相手方が協力義務を否定している場合の標準的な訴訟構成(条件付給付判決)を示す。将来の給付の訴えにおける「あらかじめ請求する必要」の具体的判断として、相手方の拒絶の態度を重視する実務上の指針となる。
事件番号: 昭和38(オ)1272 / 裁判年月日: 昭和39年9月8日 / 結論: 棄却
農地の買主は、その必要があるかぎり、売主に対し、知事の許可を条件として農地所有権移転登記手続請求をすることができる。
事件番号: 昭和36(オ)360 / 裁判年月日: 昭和38年6月25日 / 結論: 棄却
控訴人が「原判決中控訴人敗訴の部分を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。被控訴人の附帯控訴を棄却する。」旨の裁判を求め、第一審で棄却された反訴請求には何ら言及していない場合には、右反訴請求については、不服申立の範囲外であるとして控訴審の判断が示されなくても違法でない。
事件番号: 昭和31(オ)686 / 裁判年月日: 昭和35年10月27日 / 結論: 棄却
一 契約解除の前提としての催告が有効であるためには、少くとも催告と同時に相手方が遅滞に付されることを要する。 二 双務契約上の債務の受領遅滞にある者が契約解除の前提としての催告をするためには、受領遅滞を解消させた上でこれをしなければならない。
事件番号: 昭和30(オ)995 / 裁判年月日: 昭和33年6月5日 / 結論: 棄却
一 知事の許可を停止条件として締結された農地の売買契約は、無効ではない 二 土地の買主が約定の履行期後、売主に対し、しばしばその履行を求め、かつ売主において右土地の所有権移転登記手続をすれば、何時でも支払えるよう残代金の準備をしていたときは、民法第五五七条にいわゆる「契約の履行に著手」したものと認めるのが相当である