判旨
住宅一棟の一部の明渡請求において、裁判所は請求の一部に理由があると認めた場合、当事者がその一部のみの認容を求めないことが明らかな場合を除き、一部認容判決をすることができる。
問題の所在(論点)
家屋全体の明渡請求に対し、裁判所がその一部についてのみ明渡しを命じる「一部認容判決」をすることは、処分権主義に抵触しないか。
規範
住宅払底の社会事情に鑑み、住宅の一棟の一部を居住関係において可分的に取り扱うことは社会の要請に適合する。裁判所は、明渡請求の一部に理由がある場合、請求当事者がその理由ある部分のみでは認容判決を求めないことが記録上明らかな場合でない限り、一部認容判決をなしうる。
重要事実
被上告人(原告)は、上告人(被告)に対し家屋全体の明渡しを請求した。原審は、当該家屋の一部については借家法上の正当事由があるとして請求を認めたが、他の一部については理由がないとして棄却し、一部認容の判決を下した。上告人は、一部認容が処分権主義(民事訴訟法186条、現246条)等に違反すると主張して上告した。
あてはめ
住宅の一棟の一部であっても、居住実態に基づき可分的に取り扱うことが可能である。本件において、被上告人が「理由ありとされる一部のみの認容であれば判決を求めない」という意思を明確にしていたとは記録上認められない。したがって、請求の一部に正当事由が認められる以上、その範囲で明渡しを命じることは、当事者の合理的意思に反せず、適法である。また、被上告人が賃借人の居住を知りつつ買い受けた事情等を含めても、権利濫用には当たらない。
結論
家屋の一部の明渡請求に正当事由が認められる場合、一部認容判決をすることは適法であり、処分権主義には違反しない。
実務上の射程
処分権主義の限界に関する判例。請求の「質的一部」ではなく「量的一部」の認容として、原告の合理的意思に反しない限り、一部認容が肯定される。建物明渡訴訟における正当事由の有無が場所的に分かれる場合の実務上の処理指針となる。
事件番号: 昭和28(オ)671 / 裁判年月日: 昭和30年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】家屋が可分である限り、その一部についてのみ明渡しを命じることは適法であり、家屋全部の明渡しを求める請求には、特段の事情がない限り、当然にその一部の明渡しを求める趣旨が含まれる。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、上告人(被告)に対し、本件家屋全部の明渡しを求め、予備的に階下全部の明渡しを請求し…