原告が家屋の全部明渡の請求をした場合に、一部明渡を命じる判決をしても、当事者の申立てない事項につき判決をしないものとはいえない。
家屋全部明渡の請求に対する一部明渡の判決と民訴第一八六条
民訴法186条
判旨
家屋明渡請求において、全部明渡の請求に対し一部明渡のみを命ずる判決をすることは、一部明渡が全部明渡の申立範囲内の事項である以上、処分権主義に反しない。
問題の所在(論点)
家屋の全部明渡請求に対し、裁判所が一部の明渡のみを命ずる判決を下すことは、処分権主義(民事訴訟法246条)に抵触するか。
規範
家屋明渡しの請求は可分であり、一部明渡の請求は全部明渡の請求と異質の請求ではない。したがって、一部明渡は全部明渡の申立ての範囲内の事項に含まれると解するのが相当である。
重要事実
被上告人(原告)が上告人(被告)に対し、家屋の全部明渡を求めて提訴した。原審は、当該家屋のうち「七室」については解約申入れから6ヶ月の間正当事由が存続していたと認め、一部明渡(七室分)の効力のみを認める判断を下した。これに対し上告人は、全部明渡の申立てに対し一部明渡を命じることは、当事者の申し立てない事項について判決したもの(旧民訴法186条、現行民訴法246条違反)にあたると主張した。
あてはめ
家屋明渡請求は数量的に可分な給付を求めるものであり、その一部のみを認容することは、原告が主張する全部の認容を求める意思の範囲内に含まれる。本件において、被上告人が家屋全部の明渡を請求している以上、その内包される一部である「七室」についての明渡を命じることは、当事者の合理的な意思に合致し、相手方の防御の機会を不当に奪うものでもないため、申立範囲外の判決には当たらない。
結論
一部明渡を命じる判決は、全部明渡請求の申立範囲内の事項に対する判断であり、処分権主義に違反しない。
実務上の射程
処分権主義(246条)における「申立ての範囲内」の解釈として、数量的一部認容が許容される典型例(家屋明渡、金銭請求等)を示す際、あるいは質的一部認容との対比において活用できる。実務上、不可分的な請求でない限り、全部請求に対する一部認容は原則として適法とされる。
事件番号: 昭和28(オ)671 / 裁判年月日: 昭和30年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】家屋が可分である限り、その一部についてのみ明渡しを命じることは適法であり、家屋全部の明渡しを求める請求には、特段の事情がない限り、当然にその一部の明渡しを求める趣旨が含まれる。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、上告人(被告)に対し、本件家屋全部の明渡しを求め、予備的に階下全部の明渡しを請求し…