判旨
家屋が可分である限り、その一部についてのみ明渡しを命じることは適法であり、家屋全部の明渡しを求める請求には、特段の事情がない限り、当然にその一部の明渡しを求める趣旨が含まれる。
問題の所在(論点)
家屋全部の明渡しを求める請求に対し、その一部(階上部分等)のみの明渡しを命じることが、当事者の合理的な意思に反し処分権主義に抵触するか。また、全部請求に一部請求が含まれるといえるか。
規範
家屋の一部が可分である場合、その一部についてのみ明渡しを命じることは、処分権主義の観点から許容される。また、家屋全部の明渡しを求める申立ては、特段の意思表示がない限り、その一部(階上部分等)の明渡しを求める趣旨を当然に包含するものと解される。
重要事実
被上告人(原告)は、上告人(被告)に対し、本件家屋全部の明渡しを求め、予備的に階下全部の明渡しを請求した。原審は、証拠調べに基づき、被上告人の請求は「階上の明渡し」と「共用部分の使用」を求める限度で正当であると判断し、その範囲で認容判決を下した。これに対し上告人が、申立ての範囲を超えた判決である(理由不備の違法等)として上告した。
あてはめ
家屋が物理的・機能的に可分である限り、全部の明渡しを求める意思には、当然にその一部の明渡しを求める意思も含まれていると解するのが当事者の合理的意思に合致する。本件においても、被上告人が全部の明渡しを求めている以上、特段の意思表示がない限り、階上部分のみの明渡しを求める趣旨は包含されている。原審が弁論の全趣旨に基づき、一部認容が被上告人の意思に反しないと判断したことは、審理の結果に基づく合理的な判断であり、手続上の違法はない。
結論
本件家屋の一部(階上等)についてのみ明渡しを命じた原判決は適法であり、上告を棄却する。
実務上の射程
処分権主義(民訴法246条)における「一部認容」の可否に関する判断枠組みを示す。全部請求の中に一部請求が包含されているか否かは、対象物の可分性や当事者の合理的意思により判断されるべきであり、本判決は不動産の明渡請求において一部認容が広く認められる根拠として活用できる。
事件番号: 昭和28(オ)102 / 裁判年月日: 昭和30年5月24日 / 結論: 棄却
原告が家屋の全部明渡の請求をした場合に、一部明渡を命じる判決をしても、当事者の申立てない事項につき判決をしないものとはいえない。