判旨
賃貸借契約において、賃料を1か月分でも不払いにしたときは無催告で解除できる旨の特約は、信義則に反し権利の濫用と認められる特段の事情がない限り有効である。
問題の所在(論点)
1か月分でも賃料支払を怠った場合に無催告で解除できるとする特約に基づきなされた解除が、信義則上または権利の濫用として制限されるか。
規範
賃貸借契約における無催告解除条項(特約)は、その不履行が契約の基礎となる信頼関係を破壊するに足りない特段の事情がある場合には権利の濫用として制限されるが、そのような事情がない限りは有効であり、催告なしに契約を解除することができる。
重要事実
上告人(賃借人)と被上告人(賃貸人)との間には、調停条項により「賃料を1か月分でも支払うことを怠ったときは、被上告人において催告を要しないで契約を解除しうる」旨の特約が定められていた。その後、上告人が賃料の支払を怠ったため、被上告人は当該特約に基づき無催告での解除の意思表示を行った。
あてはめ
本件における無催告解除条項は、当事者間の合意(調停条項)に基づき明確に定められたものである。原審が認定した事実関係によれば、被上告人がこの特約に基づいて行った解除の意思表示を、権利の濫用と認める余地はない。したがって、催告を欠いた解除であっても有効に成立していると解される。
結論
本件解除の意思表示は有効であり、権利の濫用には当たらない。したがって、上告人の請求(上告)は棄却される。
実務上の射程
信頼関係破壊の法理(最判昭28・9・25等)との関係で、無催告解除特約があっても直ちに解除が認められるわけではなく、形式的に特約に該当しても「信頼関係を破壊するに足りない特段の事情」の有無が検討対象となる点に注意が必要である。本判決は、そのような事情がない場合の特約の有効性を肯定する実務上の指針となる。
事件番号: 昭和33(オ)319 / 裁判年月日: 昭和35年2月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約において、賃料の支払を一回でも怠ったときは催告を要せず解除できる旨の特約(無催告解除特約)は、債務者に履行遅滞の責がある場合には有効であり、これに基づき催告なしに契約を解除することができる。 第1 事案の概要:賃貸人と賃借人の間で賃貸借契約が締結された際、賃料は持参払の定めとされ、かつ「…