判旨
賃貸借契約において、賃料の支払を一回でも怠ったときは催告を要せず解除できる旨の特約(無催告解除特約)は、債務者に履行遅滞の責がある場合には有効であり、これに基づき催告なしに契約を解除することができる。
問題の所在(論点)
賃料支払の遅延を理由として、催告を要せず直ちに契約を解除できるとする「無催告解除特約」の効力、および同特約に基づく解除が認められるための要件が問題となる。
規範
賃貸借契約における無催告解除特約(賃料支払を一度でも怠れば催告なく解除できる旨の合意)は、原則として有効である。もっとも、信頼関係を破壊するに至らない特段の事情がある場合には、当該特約に基づく解除権の行使は制限される(本判決の背後にある「信頼関係の理論」の前提)。
重要事実
賃貸人と賃借人の間で賃貸借契約が締結された際、賃料は持参払の定めとされ、かつ「貸料の支払を一回でも怠ったときは催告を要せず解除できる」旨の特約が付されていた。賃借人が賃料の支払を遅滞したため、賃貸人は当該特約に基づき、催告の手続きを経ることなく契約解除の意思表示を行った。
あてはめ
本件では、賃料の支払が持参払と定められていたにもかかわらず、賃借人は統制額の範囲内での家賃支払の催促を受けたにもかかわらず履行を怠った。この事実に照らせば、賃借人には履行遅滞の責があるといえる。このような状況下で、一回の遅滞で解除できる旨の特約に基づき解除を認めた原審の判断は適法である。賃借人の債務不履行により、無催告での解除を正当化し得る状況にあったと解される。
結論
無催告解除特約は有効であり、賃料支払を怠った賃借人に対し、特約に基づき催告なしになされた本件解除は有効である。
実務上の射程
本判決は無催告解除特約の有効性を認めるが、その後の判例(最判昭35・4・21等)により、「信頼関係が破壊されたと認めるに足りない特段の事情」がある場合には解除権行使が制限されるという法理が確立した。答案作成上は、特約の有効性を前提としつつ、信頼関係破壊の有無をあてはめの中心に据えるべきである。
事件番号: 昭和42(オ)919 / 裁判年月日: 昭和43年11月21日 / 結論: 棄却
建物の賃借人が差押を受けまたは破産宣告の申立を受けたときは賃貸人はただちに賃貸借契約を解除することができる旨の特約は、借家法第六条により無効である。