建物の賃借人が差押を受けまたは破産宣告の申立を受けたときは賃貸人はただちに賃貸借契約を解除することができる旨の特約は、借家法第六条により無効である。
建物の賃借人が差押を受けまたは破産宣告の申立を受けたときは賃貸人はただちに賃貸借契約を解除することができる旨の特約の効力
借家法6条,借家法1条ノ2
判旨
建物の賃借人が差押えや破産宣告の申立てを受けた場合に賃貸人が直ちに契約を解除できる旨の特約は、賃貸人の解約を制限する借地借家法の趣旨に反し、賃借人に不利なものとして無効である。
問題の所在(論点)
建物の賃貸借契約において、賃借人の信用不安(差押えや倒産手続の開始)を理由として賃貸人に無催告解除権を付与する特約が、賃借人に不利な特約として無効(借地借家法30条、旧借家法6条)となるか。
規範
建物の賃借人が差押えを受け、または破産宣告の申立てを受けたときに賃貸人が直ちに契約を解除できるとする特約は、正当事由のない解約を制限する借家法1条の2(現行借地借家法28条)の規定の趣旨に反し、賃借人に不利なものであるから、同法6条(現行借地借家法30条)に基づき無効となる。
重要事実
建物の賃貸借契約において、「賃借人が差押えを受け、または破産宣告の申立てを受けたときは、賃貸人は催告を要せず直ちに契約を解除することができる」旨の特約(いわゆる倒産解除条項)が合意されていた。その後、賃借人が差押えまたは破産申立て(詳細は判決文からは不明)を受けたため、賃貸人が当該特約に基づき契約の解除を主張した事案である。
あてはめ
本件特約は、賃借人に債務不履行がない場合であっても、差押えや破産申立てという事実のみをもって賃貸人に解除権を認めるものである。これは、賃貸人による更新拒絶や解約申し入れに「正当の事由」を要求することで賃借人の居住・営業の基盤を保護しようとする借家法1条の2(現行28条)の強行法的性格を潜脱する。したがって、賃借人の法的地位を著しく不安定にするものであり、同法6条(現行30条)が禁じる「賃借人に不利な特約」に該当すると評価される。
結論
本件解除特約は無効である。したがって、賃貸人は当該特約に基づき賃貸借契約を解除することはできない。
実務上の射程
本判決は旧借家法下の判断であるが、現行借地借家法30条のもとでも同様に解される。実務上、倒産解除条項は公序良俗違反や強行法規違反(破産法等の趣旨)から否定される傾向にあるが、建物賃貸借においては本判決により明確に否定されている。司法試験上は、当事者間の合意があっても強行法規による修正が及ぶ典型例として活用すべきである。
事件番号: 昭和42(オ)1104 / 裁判年月日: 昭和43年11月21日 / 結論: 棄却
家屋賃貸借契約において、一箇月分の賃料の遅滞を理由に催告なしで契約を解除することができる旨を定めた特約条項は、賃料の遅滞を理由に当該契約を解除するにあたり、催告をしなくても不合理とは認められない事情が存する場合には、催告なしで解除権を行使することが許される旨を定めた約定として有効と解するのが相当である。