判旨
借地法10条に基づく建物買取請求権が行使された場合、借地権者は建物代金の支払いと引き換えに建物を引き渡す義務を負う。この引渡義務は建物明渡義務とは別個の概念であり、請求権行使の結果として当然に発生する。
問題の所在(論点)
建物買取請求権が行使された場合、借地権者は土地所有者に対して当該建物の「引渡義務」を負うか、またそれは建物「明渡義務」と区別されるべきか。
規範
借地権者が借地法10条(現行借地借家法13条1項)に基づく建物買取請求権を行使した場合、建物について売買契約に準ずる法律関係が成立する。この結果、建物所有権は土地所有者に移転し、借地権者は建物代金の支払いと引き換えに、対象建物を引き渡す義務を負う。
重要事実
上告人(借地権者)は、被上告人(土地所有者)に対し、本件借地上の家屋について借地法10条に基づく建物買取請求権を行使した。その後、被上告人が上告人に対し、当該買取請求の対象となった家屋の引渡しを求めて提訴した。第一審および原審は被上告人の請求を正当として認容したが、上告人側はこれが家屋の「明渡義務」に関する判断として誤りがある旨を主張して上告した。
あてはめ
本件において、上告人は自ら建物買取請求権を行使しており、これにより家屋の売買が成立したのと同様の状態が生じている。被上告人が求めているのは買取請求の対象となった家屋の「引渡義務」の履行であり、これは占有を解くことを意味する「明渡義務」とは異なる性質のものである。原審がこの引渡義務を認めたことは、借地法10条の解釈として正当であり、理由の不備や齟齬は認められない。
結論
借地権者は建物買取請求権の行使により、建物代金引換での建物引渡義務を負う。原審の判断に誤りはなく、上告を棄却する。
実務上の射程
事件番号: 昭和34(オ)288 / 裁判年月日: 昭和35年7月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地権の承継が認められない事実関係の下では、建物買取請求権を行使することはできない。また、特段の事情がない限り、土地明渡請求が権利濫用や信義則違反に当たるとはいえない。 第1 事案の概要:上告人(被告)は本件土地上の建物を所有し、被上告人(原告)に対して建物買取請求権を主張した。しかし、原審におい…
建物買取請求権の行使によって生じる「引渡義務」の法的性質を明確にした点に意義がある。答案作成上は、買取請求権行使による同時履行関係(代金支払と引渡し)を論じる際の基礎として活用できる。なお、「引渡し」と「明渡し」の用語の峻別に注意を要する。
事件番号: 昭和32(オ)840 / 裁判年月日: 昭和35年2月9日 / 結論: 棄却
借地人の債務不履行による土地賃貸借契約解除の場合には、借地人は借地法第四条第二項による建物等買取請求権を有しない。
事件番号: 昭和32(オ)260 / 裁判年月日: 昭和33年4月8日 / 結論: 棄却
第三者が、賃借土地の上に存する建物の所有権を取得した場合において、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しない間に賃貸借が賃料不払のため解除されたときは、借地法第一〇条に基く第三者の建物買取請求権は、これによつて消滅するものと解すべきである。
事件番号: 昭和36(オ)304 / 裁判年月日: 昭和36年9月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法10条(現行借地借家法14条)に基づく建物買取請求権は、買取請求の意思表示の時点において、土地賃借権が有効に存在していることを要件とする。 第1 事案の概要:上告人A1及びA2が、被上告人所有の土地を賃借し、その地上に建物を所有していた事案において、賃料の支払をめぐる争い等により賃貸借関係の…
事件番号: 昭和31(オ)522 / 裁判年月日: 昭和32年9月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実認定は裁判所の裁量権の範囲に属する事項であり、原審がその裁量権の範囲内で行った事実認定を不当として法令違反を主張することは、適法な上告理由にはならない。 第1 事案の概要:上告人らは、原審(控訴審)が行った事実認定には誤りがあり、不当であると主張した。その上で、当該事実認定を前提とする原審の判…