判旨
代物弁済契約の成立認定において、公正証書への記載がないことは直ちに契約の不在を意味せず、また当事者が明渡しを求めている対象土地について、相手方が代物弁済による所有権取得を主張する場合、その目的物は特定されていると解するのが相当である。
問題の所在(論点)
1. 公正証書に記載のない代物弁済契約の成立を認定することは経験則に反するか。 2. 明渡請求の対象となっている土地につき、代物弁済契約の目的物としての特定が認められるか。
規範
1. 代物弁済契約(民法482条)の成否は、公正証書等の書面の有無にかかわらず、諸般の証拠に基づき合理的に認定されるべきであり、書面への不記載のみをもって直ちに契約の成立を否定することはできない。 2. 契約の目的物の特定については、当事者間での争いの経緯や主張の前提に照らし、客観的に対象が画定し得る状態にあれば足りる。
重要事実
上告人(債権者)は、被上告人(債務者)に対し、本件土地(6坪)の明渡しを求めて提訴した。これに対し被上告人は、上告人との間の消費貸借上の債務を消滅させるため、本件土地を代物弁済として譲り受け、既に所有権を取得したと反論した。上告人は、(1)代物弁済契約が公正証書に記載されていないこと、(2)本件土地が特定されていないことを理由に、契約の成立や有効性を争った。
あてはめ
1. 契約の成否について、原審が挙げた証拠によれば代物弁済契約の事実は認められ、公正証書に記載がないからといって契約が存在しないと断ずることはできない。このような認定は経験則に反するものではない。 2. 目的物の特定について、本件土地は上告人が第一審以来明渡しを求めている土地そのものである。被上告人はまさにその土地の所有権を代物弁済により取得したと主張しているのであるから、上告人自身の主張を前提としても土地は特定されているといえる。また、現在は特定されている以上、反証がない限り当初から特定されていたと推認するのが相当である。
結論
代物弁済契約の成立を認めた原審の判断に違法はなく、土地の特定も認められるため、上告を棄却する。
事件番号: 昭和32(オ)177 / 裁判年月日: 昭和35年12月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】代物弁済契約が有効と認められるためには、対象物件の価格が当時の貨幣価値を斟酌した債権額とおよそ相応し、両者の間に著しい差異がないことが必要である。また、不法占有者に対する建物収去土地明渡請求は、特段の事情がない限り権利の濫用には当たらない。 第1 事案の概要:債務者Dは、被上告学園に対し計15万円…
実務上の射程
代物弁済の成否が争点となる事案において、書面の不備を理由とする成立否定の主張を排斥する際の論拠として活用できる。また、目的物の特定についても、訴訟上の請求対象と抗弁対象の一致から合理的に特定を肯定する実務的な手法を示している。
事件番号: 昭和28(オ)1373 / 裁判年月日: 昭和30年7月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政主体が土地の所有権を取得したという事実が認められない場合には、当該事実を前提とする主張は採用されない。判決文は、原審の証拠に基づき所有権帰属の事実を否定した判断を維持したものである。 第1 事案の概要:上告人は、本件土地が八幡浜市の所有に帰したことを前提として法的主張を展開した。しかし、原審(…
事件番号: 昭和28(オ)792 / 裁判年月日: 昭和30年11月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の分筆や合筆は、不動産登記法に定める適法な手続によってなされる必要があり、単なる登記簿上の地積増加や事実上の合筆という形式によって、既存の土地が実質的に滅失したり他土地に吸収されたりすることはない。 第1 事案の概要:上告人は、本件係争土地が自己所有の土地であると主張し、対する被上告人は当該…
事件番号: 昭和30(オ)700 / 裁判年月日: 昭和32年6月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】他人の土地を占有する者は、正当な権原を主張立証しない限り、故意過失の推定を受け不法占有の責を免れない。この理は、不法占有者の相続人が占有を継続し、かつその相続人が未成年者であっても同様に適用される。 第1 事案の概要:被上告人は、上告人らの亡父Dに対し、土地の占有に基づく金銭支払を請求した。Dの死…
事件番号: 昭和32(オ)659 / 裁判年月日: 昭和33年5月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利の行使が権利の濫用に該当するか否かは、確定された事実関係に基づき、客観的・総合的な諸事情を照らして判断される。本件においては、原審の認定した事実の範囲内では権利の濫用とは認められないと判断された。 第1 事案の概要:上告人らは、被上告人による本訴請求が権利の濫用にあたると主張して争った。原審は…