判旨
不動産の分筆や合筆は、不動産登記法に定める適法な手続によってなされる必要があり、単なる登記簿上の地積増加や事実上の合筆という形式によって、既存の土地が実質的に滅失したり他土地に吸収されたりすることはない。
問題の所在(論点)
不動産登記法上の適法な分筆・合筆手続を経ることなく、登記簿上の地積増加という形式によって「事実上の合筆」が行われた場合、元の土地が実質的に滅失し、所有権の客体としての同一性を失うか。
規範
不動産の権利の客体たる土地の範囲は、特段の事情がない限り、登記法上の適法な手続(分筆・合筆)を経て画定されるべきものである。したがって、法定の手続を経ることなく、単に登記簿上の地積を増加させる等の形式的手法によって事実上の合筆を主張しても、それは法律上の理由を欠く。土地の滅失についても、事実上の道路敷化や無手続の合筆等によって当然に実質的な滅失が認められるものではない。
重要事実
上告人は、本件係争土地が自己所有の土地であると主張し、対する被上告人は当該土地が被上告人所有のd番e宅地およびe番f宅地の一部であると主張した。これに対し上告人は、被上告人の主張する土地(d番e等)は事実上の道路敷となって一部が滅失している上、法定の分筆合筆手続を経ることなく別個の土地(b番g宅地)に事実上合併されており、登記簿上にのみ存在するだけで実質的には滅失したも同然であると反論した。
あてはめ
本件において、上告人は被上告人所有の土地が「事実上の合筆」により滅失したと主張するが、これは法定の分筆合筆手続を欠くものである。原審が「本件係争土地は少なくともd番e、e番fの一部により成り立っている」と認定し、上告人の主張を法律上理由がないとした判断は正当である。登記簿上の地積増加の具体的な理由たる事実を確定しなかったとしても、法定手続を欠く事実上の合筆による土地の消滅を否定する結論に影響はなく、理由不備の違法はない。
結論
法定の手続を経ない「事実上の合筆」による土地の消滅・吸収という主張は認められない。したがって、土地の同一性を維持した被上告人の所有権を認めた原判決は維持される。
事件番号: 昭和31(オ)582 / 裁判年月日: 昭和32年4月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】組合員が組合の共同事業のために買い受けた土地は、登記名義にかかわらず組合財産として組合員の共有に属するが、他の組合員全員が持分を放棄し特定の組合員の単独所有とすることを承認した場合には、当該組合員の単独所有に帰する。 第1 事案の概要:被上告人、D、Eの3名は、アイスケーキ製造販売の共同事業(組合…
実務上の射程
土地の範囲確定や所有権の帰属が争われる場面において、登記法上の正規の手続(表題部の変更等)を無視した「事実上の変動」を主張して対抗することの困難性を示す判例である。物権変動の客体を特定する際の形式主義・公示主義の観点から、実務上も法定手続の有無を重視すべき根拠として機能する。
事件番号: 昭和32(オ)522 / 裁判年月日: 昭和36年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】中間省略登記は、関係当事者全員の合意がある場合には有効であり、その合意は必ずしも同時になされる必要はない。 第1 事案の概要:東京都(所有者)からD工業株式会社が本件土地を買い受け、代金を完済した。その後、D工業から被上告人へ当該土地が譲渡された。この際、東京都から被上告人へ直接所有権移転登記を行…
事件番号: 昭和30(オ)592 / 裁判年月日: 昭和32年9月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸物件の一部の所有権が第三者に移転した場合であっても、賃貸人が当該第三者からその物件を改めて賃借して賃借人に提供し続けることで、従前の賃貸借関係を同一性を保ったまま存続させることができる。 第1 事案の概要:被上告会社は上告会社に対し、複数の物件を一括して賃貸していた。その後、被上告会社から分離…
事件番号: 昭和30(オ)700 / 裁判年月日: 昭和32年6月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】他人の土地を占有する者は、正当な権原を主張立証しない限り、故意過失の推定を受け不法占有の責を免れない。この理は、不法占有者の相続人が占有を継続し、かつその相続人が未成年者であっても同様に適用される。 第1 事案の概要:被上告人は、上告人らの亡父Dに対し、土地の占有に基づく金銭支払を請求した。Dの死…
事件番号: 昭和38(オ)1462 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: 棄却
賃貸人たる地主は、借地人に対し賃料請求権を有するとしても、いまだ借地人から右賃料の支払を受けていないかぎり、借地権の無断譲受人に対し賃料相当の損害賠償請求ができる。