判旨
和解契約の成否および性質について、契約締結が心裡留保によるものではなく真意に基づく表示であること、および贈与ではなく和解に該当することを肯定した。
問題の所在(論点)
本件和解契約が心裡留保(民法93条)により無効となるか、またその法的性質が和解か贈与か、錯誤の主張の可否が問題となる。
規範
意思表示が真意に基づくものであるか(心裡留保の存否)、契約に停止条件が付着しているか、および契約の法的性質(和解か贈与か)については、諸般の事実関係を総合して判断される。
重要事実
上告人と相手方との間で本件和解が締結されたが、上告人は、当該和解が(1)真意によらない心裡留保によるものである、(2)停止条件付契約である、(3)性質上贈与である、(4)要素の錯誤がある、と主張して争った。原審は、これら上告人の主張を事実関係に基づき排斥した。
あてはめ
事実関係に基づけば、本件和解は上告人の真意の表示によるものであり、心裡留保には当たらない。また、契約に停止条件が付着していた事実も認められず、その内容は贈与ではなく和解であると解される。なお、要素の錯誤については、原審で主張されていない新たな事実主張であり、上告審では採用できない。
結論
本件和解契約は有効に成立しており、贈与ではなく和解としての効力を有する。上告人の主張はいずれも採用できず、上告を棄却する。
実務上の射程
契約の成立や解釈に関する事実認定の判断枠組みを示すものである。特に、和解契約において心裡留保や錯誤を主張する場合、第一審・控訴審における事実認定の重要性を再確認させる内容となっている。
事件番号: 昭和35(オ)625 / 裁判年月日: 昭和38年2月12日 / 結論: 棄却
訴訟物たる債権の存否につき被告が答弁しないまま成立した裁判上の和解において、原告が右債権を有することを被告が認めるについての錯誤の主張は、民法第六九六条により許されないものと解するのを相当とする。
事件番号: 昭和31(オ)875 / 裁判年月日: 昭和33年11月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】即決和解の条項が一方当事者に著しく有利であっても、賃貸借解除後の経緯や返り証の不存在等の諸事情を勘案し、通謀虚偽表示等の瑕疵が認められない限り、当該和解は有効である。 第1 事案の概要:上告人A1と被上告人との間で即決和解が成立したが、その条項は被上告人にとって著しく有利な内容であった。この和解は…
事件番号: 昭和32(オ)608 / 裁判年月日: 昭和34年5月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の和解が成立した場合、その内容に錯誤等の瑕疵がない限り、当該訴訟は和解によって終了する。 第1 事案の概要:上告人は、本件訴訟においてなされた和解が錯誤に基づくものであると主張し、和解の無効を前提として訴訟の継続を求めた。原審は、当該和解に錯誤は認められないと判断し、和解により訴訟は既に終了…