判旨
債権者が民法423条(当時)に基づき債権者代位権を行使する場合、第三債務者に対して直接自己への給付を求めることができる。
問題の所在(論点)
債権者代位権(民法423条1項)の行使にあたり、債権者は第三債務者に対して、債務者に給付することを求めるだけでなく、直接自己に対して給付するよう求めることができるか。
規範
債権者代位権の行使(民法423条1項)において、債権者は、債務者に代わってその権利を行使するものであるが、金銭債権等の可分な給付を目的とする権利を行使する場合には、債務者への受領を強制する実益に乏しく、債権回収の便宜を図る必要がある。したがって、債権者は第三債務者に対し、直接自己への給付を求めることが認められる。
重要事実
債権者(上告人)が、債務者の第三債務者に対する権利を代位行使し、第三債務者に対して直接自己への支払または給付を求めた事案である(具体的な基礎事実は判決文からは不明)。原審は、債権者による直接の給付請求を認める判断を示したため、上告人は民法423条の解釈を誤った違法があるとして上告した。
あてはめ
債権者代位権の制度趣旨は債権の保全にあるところ、本判決は、先行する判例(最判昭29.9.24)を引用し、直接の給付請求を認める解釈を維持した。上告人はこの解釈を誤りであると主張するが、債権者代位権の行使として、債権者が第三債務者に対し直接自己に給付を求め得ると解することは、民法423条の適切な解釈として相当であると判断される。
結論
債権者は、債権者代位権の行使として、第三債務者に対し、直接自己に給付を求めることができる。したがって、上告人の主張には理由がなく、棄却されるべきである。
実務上の射程
事件番号: 昭和30(オ)923 / 裁判年月日: 昭和32年8月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の賃借人は、その賃借権を保全する必要があるときは、民法423条の債権者代位権に基づき、所有者である賃貸人の有する妨害排除請求権としての明渡請求権を代位行使することができる。また、親権者が子を代理してその所有地の明渡請求を代位行使することは、利益相反行為(民法826条)には当たらない。 第1 …
金銭債権や動産の引渡請求権を代位行使する場合の標準的な処理方針を示すものである。実務上は、直接の給付を受けた債権者は、債務者に対する自己の債権と、受領物の返還義務を相殺することで、事実上の優先弁済を受けることが可能となる。なお、2017年の民法改正により、423条の3として「直接自己への引渡し」を認める規定が明文化されている。
事件番号: 昭和32(オ)164 / 裁判年月日: 昭和35年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借人が、一時使用目的の借地契約における解約特約に基づき、土地所有者に代位して不法占有者に対し建物の収去及び土地の明渡を請求することは適法である。 第1 事案の概要:土地所有者Dに対し、建物所有目的の賃借権を有する債権者(被上告人)が、債務者Dに代位して、土地の一部を占有する占有者(上告人)に対し…
事件番号: 昭和32(オ)162 / 裁判年月日: 昭和35年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物所有を目的とする借地契約であっても、一時使用のための賃貸借(借地法9条)に該当し、かつ「必要時にいつでも解約できる」旨の特約がある場合には、賃貸人の債権者は代位権を行使して解約の申入れを行い、土地の明渡しを請求することができる。 第1 事案の概要:土地所有者Dの債権者である被上告人は、Dから建…
事件番号: 昭和42(オ)1469 / 裁判年月日: 昭和43年3月28日 / 結論: 棄却
土地の賃借人は賃借権を保全するため賃貸人たる土地所有者に代位して土地の不法占拠者に対し建物収去及び土地明渡を請求することができ、かつその場合、直接自己に対し右収去明渡をなすべきことを請求することができるものと解するのが相当である。(参照、昭和二九年九月二四日第二小法廷判決集八巻九号一六五八頁)。
事件番号: 昭和32(オ)163 / 裁判年月日: 昭和35年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法9条の一時使用目的の賃貸借において、地主が必要な時にいつでも解約できるとの特約が認められる場合、地主の債権者は、地主に代位して解約の申入れを行い、土地の明渡を請求することができる。 第1 事案の概要:本件土地の所有者Dは、第三者Eを介して、上告人(被告)との間で、本件土地の一部について一時使…