土地の賃借人は賃借権を保全するため賃貸人たる土地所有者に代位して土地の不法占拠者に対し建物収去及び土地明渡を請求することができ、かつその場合、直接自己に対し右収去明渡をなすべきことを請求することができるものと解するのが相当である。(参照、昭和二九年九月二四日第二小法廷判決集八巻九号一六五八頁)。
債権者代位権による建物収去土地明渡請求権の行使方法
民法423条
判旨
土地の貸借人が、その賃借権を保全するため、賃貸人に代位して土地の不法占拠者に対し建物収去及び土地明渡を請求する場合、直接自己に対してこれを行うよう求めることができる。
問題の所在(論点)
債権者代位権(民法423条)に基づき土地の返還請求権を行使する場合、代位債権者は、不法占拠者に対して直接自己への引渡しを求めることができるか。
規範
債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利を行使することができる(民法423条1項前段)。この際、債務者の権利が建物の収去や土地の明渡しを目的とするものである場合、債権者は、債務者への返還を求めるだけでなく、直接自己に対してこれを行うよう請求することが認められる。
重要事実
土地の貸借人である原告が、土地所有者(賃貸人)に代位して、当該土地を正当な権原なく占拠し建物を所有している被告に対し、建物の収去および土地の明渡しを求めた。原告は、賃貸人を経由することなく、直接自分に対して土地を明け渡すよう請求した。
事件番号: 昭和32(オ)164 / 裁判年月日: 昭和35年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借人が、一時使用目的の借地契約における解約特約に基づき、土地所有者に代位して不法占有者に対し建物の収去及び土地の明渡を請求することは適法である。 第1 事案の概要:土地所有者Dに対し、建物所有目的の賃借権を有する債権者(被上告人)が、債務者Dに代位して、土地の一部を占有する占有者(上告人)に対し…
あてはめ
土地賃借人は、賃借権という自己の債権を保全する必要がある。この際、代位の対象となる賃貸人の物権的請求権(妨害排除請求権)の行使は、単に事実上の返還を実現するだけでなく、賃借人の占有を確実にするためのものである。したがって、債務者(賃貸人)が受領を拒んでいる等の特段の事情を問わず、返還の目的が債権者の占有・使用を目的とする性質上、直接自己への明渡しを請求することが合理的であり、これを肯定すべきである。
結論
土地賃借人は、土地の不法占拠者に対し、賃貸人に代位して直接自己への建物収去および土地明渡しを請求できる。
実務上の射程
本判決は、金銭債権の代位行使における直接受領(判例法理)を、土地明渡請求等の非金銭債権にも適用したものである。答案上は、代位行使の要件(保全の必要性等)を満たした後の「行使の方法」として、直接自己への明渡しを求める構成で活用する。
事件番号: 昭和32(オ)163 / 裁判年月日: 昭和35年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法9条の一時使用目的の賃貸借において、地主が必要な時にいつでも解約できるとの特約が認められる場合、地主の債権者は、地主に代位して解約の申入れを行い、土地の明渡を請求することができる。 第1 事案の概要:本件土地の所有者Dは、第三者Eを介して、上告人(被告)との間で、本件土地の一部について一時使…
事件番号: 昭和30(オ)772 / 裁判年月日: 昭和31年1月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債権者が民法423条(当時)に基づき債権者代位権を行使する場合、第三債務者に対して直接自己への給付を求めることができる。 第1 事案の概要:債権者(上告人)が、債務者の第三債務者に対する権利を代位行使し、第三債務者に対して直接自己への支払または給付を求めた事案である(具体的な基礎事実は判決文からは…
事件番号: 昭和29(オ)896 / 裁判年月日: 昭和30年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債権者代位権(民法423条1項)を行使して第三者に対し建物の収去及び土地の明渡しを請求するためには、代位される債務者が当該第三者に対して返還請求権を有していることが必要である。第三者が債務者から正当に土地を賃借している場合、代位行使の前提となる債務者の権利が存在しないため、代位請求は認められない。…
事件番号: 昭和39(オ)708 / 裁判年月日: 昭和40年3月16日 / 結論: 棄却
家屋を賃借居住する者は、家屋敷地を占有する。