判旨
借地法9条の一時使用目的の賃貸借において、地主が必要な時にいつでも解約できるとの特約が認められる場合、地主の債権者は、地主に代位して解約の申入れを行い、土地の明渡を請求することができる。
問題の所在(論点)
一時使用目的の借地契約において、合意された解約権留保の特約に基づく解約申入れを、地主の債権者が代位行使することの可否。
規範
一時使用目的の借地権(旧借地法9条、現借地借家法25条)においては、通常の借地権に適用される更新拒絶の正当事由(旧借地法4条1項、6条等)等の規定が適用されない。したがって、合意によって「所有者が土地を必要とするときは、いつでも解約申入れができる」旨の特約(解約権留保の特約)を設けることが可能であり、当該特約に基づく解約申入れは、債権者代位権(民法423条)の行使によってもなしうる。
重要事実
本件土地の所有者Dは、第三者Eを介して、上告人(被告)との間で、本件土地の一部について一時使用を目的とする賃貸借契約を締結した。この際、Eは代理権を有していなかったが、上告人にはEに代理権があると信ずべき正当な理由があったため、表見代理が成立し、Dに契約の効力が帰属した。また、当該契約には「Dにおいて必要とするときは、何時でも解約のうえ土地明渡を請求できる」という暗黙の合意(特約)が付随していた。一方、被上告人(原告)は、Dに対し本件土地全体の賃借権(建物所有目的)を有していたが、上告人が一部を占有しているため、Dの債権者としてDに代位し、上記特約に基づく解約申入れと建物収去土地明渡を求めて提訴した。
あてはめ
まず、本件契約は一時使用のための賃貸借(借地法9条)に該当するため、借地人の保護を目的とする強行規定の適用を受けず、自由な解約特約が有効である。事実関係によれば、Dと上告人の間にはDが必要なときに何時でも解約しうべき暗黙の合意が認められる。Dはこの解約権を行使していないが、被上告人はDに対する賃借権(土地使用権)を保全する必要がある債権者であるといえる。したがって、被上告人がDに代位して解約の申入れを行ったことは適法であり、上告人はもはや土地を占有する正当な権原を有しない状態に至ったと評価される。
結論
地主の債権者は、一時使用目的の借地契約における解約特約に基づき、地主に代位して解約申入れ及び土地明渡請求をすることができる。
事件番号: 昭和32(オ)164 / 裁判年月日: 昭和35年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借人が、一時使用目的の借地契約における解約特約に基づき、土地所有者に代位して不法占有者に対し建物の収去及び土地の明渡を請求することは適法である。 第1 事案の概要:土地所有者Dに対し、建物所有目的の賃借権を有する債権者(被上告人)が、債務者Dに代位して、土地の一部を占有する占有者(上告人)に対し…
実務上の射程
一時使用目的の借地であることを前提に、債権者代位権の行使(民法423条)というスキームで明渡を認めた事例。答案上は、借地借家法25条(一時使用)の要件充足を確認した上で、解約権留保の特約が公序良俗や強行規定に反しないこと、及びその代位行使の可否を論じる際の論拠となる。
事件番号: 昭和32(オ)162 / 裁判年月日: 昭和35年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物所有を目的とする借地契約であっても、一時使用のための賃貸借(借地法9条)に該当し、かつ「必要時にいつでも解約できる」旨の特約がある場合には、賃貸人の債権者は代位権を行使して解約の申入れを行い、土地の明渡しを請求することができる。 第1 事案の概要:土地所有者Dの債権者である被上告人は、Dから建…
事件番号: 昭和30(オ)923 / 裁判年月日: 昭和32年8月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の賃借人は、その賃借権を保全する必要があるときは、民法423条の債権者代位権に基づき、所有者である賃貸人の有する妨害排除請求権としての明渡請求権を代位行使することができる。また、親権者が子を代理してその所有地の明渡請求を代位行使することは、利益相反行為(民法826条)には当たらない。 第1 …
事件番号: 昭和33(オ)273 / 裁判年月日: 昭和33年11月27日 / 結論: 棄却
一 仮建築の建物を建てて使用するため、期間を一年とし、当事者協議の上更新し得る約で土地を賃貸したところ、賃借人が、無断で本建築をしたので、賃貸人から家屋収去土地返還の調停を申立てた結果、賃貸期間を調停成立以後約八年とし期間満了のとき賃借人所有の地上建物は賃貸人に贈与する旨の調停が成立した場合、右賃貸借は、一時使用のため…
事件番号: 昭和32(オ)569 / 裁判年月日: 昭和34年5月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法(現行の借地借家法25条相当)にいう「建物所有を目的とする賃貸借」に該当しないか、あるいは「一時使用のための借地権」と認められる場合には、存続期間に関する法定の制限を受けず、約定期間の満了により賃貸借が終了する。 第1 事案の概要:本件賃貸借契約において、当事者は約定の期間満了による契約終了…