判旨
特許出願前に特定の企業間等で発明の内容がやり取りされたとしても、それが秘密の状態に置かれ、一般第三者に知られ得る状態に至っていないのであれば、当該発明は公知になったとは認められない。
問題の所在(論点)
特許法における新規性喪失の要件である「公知」の意義が問題となる。特に、特定の会社間での発表や情報交換があった場合に、それが直ちに「公知の状態」に該当するか、あるいは「秘密の状態」として公知性が否定されるかが論点となる。
規範
特許法(旧法含む)上の「公知」とは、発明の内容が秘密を脱した状態、すなわち不特定の者に知られ、あるいは知られ得る状態にあることをいう。特定当事者間での情報の授受があっても、それが秘密の状態として維持されている限りは、依然として公知の状態には至っていないものと解すべきである。
重要事実
上告人(被告会社)は、本件特許発明(実用新案登録出願に関連するもの)が、その出願前にD木材工業株式会社と被告との間で発表された事実がある等と主張し、乙第2号証の1等の証拠に基づき、当該考案が既に公知であったと争った。しかし、原審は、当該証拠の内容が公表されたとは認められず、本件特許発明は秘密の状態に置かれていたと認定した。
あてはめ
本件において、D木材工業と被告との間で行われた発表や資料の授受は、その内容が一般に公表されたものとは認められない。証拠上、被告の代表者自身も本件発明が公知でないと認識していた事実に照らせば、当該発明は依然として秘密の状態に維持されていたと評価される。したがって、客観的に一般第三者が知り得る状態、すなわち公知の状態にあったとはいえない。
結論
本件特許発明は出願前に公知の状態になっていたとは認められず、新規性を失っていない。よって、公知性を前提とする上告人の主張は採用できず、上告を棄却する。
事件番号: 昭和32(オ)249 / 裁判年月日: 昭和33年7月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】発明が賭博や不正の具に供される可能性があっても、直ちに公序良俗を害するおそれがあるとは認められず、特許法上の不特許事由には該当しない。また、行政上の営業許可と特許権の効力は別個の法的問題である。 第1 事案の概要:上告人は、本件発明(競技装置)が新規性・工業的利用性を欠くこと、また、賭博や不正に利…
実務上の射程
特定の取引先や共同開発先への開示が「公知」にあたるか否かの判断基準として機能する。守秘義務の有無や情報の管理実態から「秘密の状態」が維持されていると評価できれば、公知性を否定する根拠となる。答案上は、不特定多数が知り得る状態(公知)か、限定的な範囲で秘密性が維持されているかを具体的事実から振り分ける際に用いる。
事件番号: 昭和40(行ツ)88 / 裁判年月日: 昭和45年6月16日 / 結論: 棄却
(省略)
事件番号: 昭和29(オ)331 / 裁判年月日: 昭和30年3月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特許出願された発明が、先行する公知の技術(実用新案出願公告にかかる方法)と同一である場合には、新規性を欠くものとして特許を認めないのが相当である。 第1 事案の概要:上告人は、自らの発明について特許出願を行ったが、特許庁の審決において、当該発明は昭和23年実用新案出願公告第1357号に記載された方…
事件番号: 昭和28(オ)1311 / 裁判年月日: 昭和30年5月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特許法上の発明(旧特許法1条の工業的発明)とは、自然法則の利用によって一定の文化目的を達成する技術的考案をいう。 第1 事案の概要:上告人らは、自らが行った考案について、特許能力が認められるべきであると主張して上告した。原審は、当該考案が当時の特許法1条にいう「工業的発明」に該当しないとして特許能…