判旨
特許法上の発明(旧特許法1条の工業的発明)とは、自然法則の利用によって一定の文化目的を達成する技術的考案をいう。
問題の所在(論点)
旧特許法1条(現行法2条1項に相当)における「発明」(工業的発明)の定義如何。特に、自然法則の利用が必要かどうかが問題となった。
規範
特許法にいう「発明」とは、自然法則の利用によって一定の文化目的を達成する技術的考案を指すと解すべきである。この解釈は、万国工業所有権保護同盟条約(パリ条約)の趣旨にも反するものではない。
重要事実
上告人らは、自らが行った考案について、特許能力が認められるべきであると主張して上告した。原審は、当該考案が当時の特許法1条にいう「工業的発明」に該当しないとして特許能力を否定したが、上告人らは、この判断が工業的発明の意味を狭く解しすぎており、国際条約や憲法98条2項に違反すると主張した。なお、考案の具体的な内容については本判決文からは不明である。
あてはめ
最高裁判所は、発明の本質を「自然法則の利用」にあると定義した。本件における上告人らの考案は、原審が認定した事実関係に基づけば、自然法則を利用して一定の文化目的を達する技術的考案とはいえない。したがって、当該考案は法上の発明としての要件を欠いており、特許能力を有しないと解される。上告人が主張する条約違反等の主張も、この発明の定義に照らせば理由がない。
結論
本件考案は特許法上の発明にあたらないため、特許能力は認められない。
実務上の射程
現行特許法2条1項の「発明」の定義(自然法則を利用した技術的思想の創作)の解釈指針として機能する。自然法則を利用していない計算方法や純粋な経済法則、精神活動などは、本判例の規範に基づき、現在も特許法上の発明から除外される。
事件番号: 昭和25(オ)80 / 裁判年月日: 昭和28年4月30日 / 結論: 棄却
特許法第一条にいわゆる工業的発明とは自然法則の利用によつて一定の文化的目的を達するに適する技術的考案をいうのであつて、何等の装置を用いず、また自然力を利用した手段を施していない考案は工業的発明とはいえない。
事件番号: 昭和28(オ)512 / 裁判年月日: 昭和30年3月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】実用新案法(旧法)に基づく登録対象となるためには、考案が同法1条にいう「新規ノ型ノ工業的考案」に該当することを要し、新規性を欠く考案については登録を受けることができない。 第1 事案の概要:上告人は、自らの考案について実用新案法に基づく登録を求めた。しかし、原審において、当該考案は同法1条に規定さ…
事件番号: 昭和30(オ)608 / 裁判年月日: 昭和31年7月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が原判決の違法に直接関係のない事柄の主張や、原判決の認定に副わない事実を前提とする主張にすぎない場合、原判決に影響を及ぼす明らかな法令の違背があるとは認められない。 第1 事案の概要:上告人は原判決の違法を主張して上告したが、その主張内容は多岐にわたるものの、大部分は原判決の違法とは直接関…