特許法第一条にいわゆる工業的発明とは自然法則の利用によつて一定の文化的目的を達するに適する技術的考案をいうのであつて、何等の装置を用いず、また自然力を利用した手段を施していない考案は工業的発明とはいえない。
特許法第一条の工業的発明の意義
特許法1条
判旨
特許法上の発明とは、自然法則を利用して一定の目的を達成する技術的考案を指し、特許能力を有する工業的発明というためには、何らかの装置を用いるか、あるいは自然力を利用した手段を講じている必要がある。
問題の所在(論点)
旧特許法1条(現行法2条1項)における「発明」の定義、および特許能力の要件としての「工業的発明」の意義が問題となった。具体的には、装置や自然力を利用しない考案が「発明」として特許を受けられるか。
規範
特許法上の「発明」は、自然法則の利用によって一定の文化目的を達成するに適する技術的考案であることを要する。また、同法にいう「工業的発明」とは、あらゆる産業に利用され得るものであるが、同時に「技術産業的特質」を備えた発明に限られる。したがって、自然力を利用した手段を欠くものは、特許能力を有する発明とは認められない。
重要事実
上告人らは、ある考案(本願発明)について特許出願を行ったが、特許庁の審決により特許能力を否定されたため、その取消しを求めて提訴した。原判決は、本願発明が何ら装置を用いず、かつ自然力を利用した手段も施していないことから、「工業的発明」に該当しないとして特許能力を否定した。これに対し上告人らは、原判決の法律解釈の誤りや、自白の拘束力違反などを理由に上告した。
事件番号: 昭和28(オ)1311 / 裁判年月日: 昭和30年5月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特許法上の発明(旧特許法1条の工業的発明)とは、自然法則の利用によって一定の文化目的を達成する技術的考案をいう。 第1 事案の概要:上告人らは、自らが行った考案について、特許能力が認められるべきであると主張して上告した。原審は、当該考案が当時の特許法1条にいう「工業的発明」に該当しないとして特許能…
あてはめ
本件発明の内容について事実上の争いはないところ、本願発明は結局のところ何ら装置を用いていない。また、目的達成のために自然力を利用した手段も施されていない。このような考案は、自然法則の利用を本質とする技術的考案とはいえず、工業的発明が備えるべき技術産業的特質を欠いている。したがって、特許法上の「工業的発明」としての要件を満たさないと評価される。
結論
本願発明は自然力を利用した手段を施しておらず、特許能力を有する工業的発明とはいえないため、特許は認められない。
実務上の射程
本判決は現行特許法2条1項の「発明」の定義(自然法則を利用した技術的思想の創作)の解釈指針として機能する。計算方法や単なるビジネス手法など、自然法則を利用しない純粋な精神的活動や論理的法則のみに依存する考案を、特許の対象外として排除する際の根拠として引用される。
事件番号: 昭和30(オ)101 / 裁判年月日: 昭和31年4月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】先行技術を具体的な製品として具体化する際に、設計上の当然の結果として生じる構成は、格別の新規性を有するものとは認められない。また、構成自体が設計上の当然の結果とされる場合には、著大な工業的効果の有無を審理する必要はない。 第1 事案の概要:上告人は、自らの考案した測深機の方式が新規な発明であると主…
事件番号: 昭和26(オ)745 / 裁判年月日: 昭和28年10月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特許審決取消訴訟において、審判過程で主張されなかった事実や審決の基礎とされなかった事実を、訴訟段階で新たに主張し、裁判所がこれを判決の基礎として採用することは違法ではない。 第1 事案の概要:上告人(発明者)は、自らが発明した製粉機が当時の特許法1条にいう「新規ナル工業的発明」に該当すると主張して…