判旨
公知の事実や周知の技術手段を組み合わせることが、当業者にとって格別の発明力を要しない設計的手段に過ぎない場合、その発明の進歩性(発明力)は否定される。また、その組み合わせから得られる効果が、公知事実の実施により当然に予期される範囲内であれば、発明性を基礎付けるものとはならない。
問題の所在(論点)
公知の技術手段(毛細管作用の利用)を既存の製品(ボールペン)に適用したに過ぎない構成が、特許法上の「発明力(進歩性)」を有するか、また、その作用効果が発明性の判断にどう影響するか。
規範
特許法(旧法含む)上の発明性を判断する際、先行技術に基づいて当業者が容易に想到し得る設計的変更や技術の転用は、格別の発明力を要しないものとして否定される。具体的には、公知の複数の技術手段を組み合わせることについて格別の困難性がなく、かつ、その効果が公知事実から予測される範囲内である場合には、発明の進歩性を認めることはできない。
重要事実
上告人は、ボールペンのインク貯部として、後端に通気孔を有する毛細管そのものを利用する発明につき特許出願を行ったが、拒絶査定を受けた。当時、①万年筆のインク貯部に毛細管作用を利用してインクを保持させる技術、②先球式書写具としてのボールペン自体、および③毛細管作用のために毛細管そのものを使用する手法は、いずれも公知であった。
あてはめ
本件発明は、公知のボールペンに対し、同じく公知である毛細管そのものをインク貯部として利用するものである。この組み合わせは、当時の技術水準に照らせば格別の発明力を要しない設計的手段に過ぎない。また、上告人が主張する優れた作用効果も、ボールペンの先端構造に関する本件発明の要旨外の事項を除けば、公知技術をボールペンに実施した結果として当然に予期される効果の範囲に留まっている。
結論
本件発明は、当業者が容易に想到し得る設計的変更の範囲内であり、格別の発明力を欠くため、特許を受けることはできない。
実務上の射程
進歩性否定の論理として「設計的手段に過ぎない」という表現を用いる際の規範として活用できる。特に、公知技術の単なる組み合わせにおいて、その効果が「当然予期される効果」に過ぎない場合に、発明性を否定する有力な根拠となる。答案上は、周知・公知の事実を摘示した上で、本判決の枠組みを使い「予測される範囲内の効果」であることを指摘する流れが有効である。
事件番号: 昭和30(オ)101 / 裁判年月日: 昭和31年4月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】先行技術を具体的な製品として具体化する際に、設計上の当然の結果として生じる構成は、格別の新規性を有するものとは認められない。また、構成自体が設計上の当然の結果とされる場合には、著大な工業的効果の有無を審理する必要はない。 第1 事案の概要:上告人は、自らの考案した測深機の方式が新規な発明であると主…