判旨
利息制限法を超過する利息の約定がある消費貸借契約や、それに基づく代物弁済の予約は、公序良俗に反する等の特段の事情がない限り、直ちに全部が無効となるわけではない。また、予約完結時の目的物の価額が本来の給付額を上回っていても、予約締結時を基準として不当といえる特段の事情がない限り、予約完結権の行使は有効である。
問題の所在(論点)
利息制限法を超過する利息の約定を伴う消費貸借契約、およびそれに基づきなされた代物弁済の予約が、民法90条の公序良俗に反して無効となるか。また、代物弁済の目的物の価値が債務額を超過する場合の予約完結権行使の有効性が問題となる。
規範
1. 利息制限法所定の利率を超過する約定がある場合でも、①約定利率が異常に高く、社会通念上、給付と反対給付の間に著しい不均衡が認められる場合や、②債務者の窮迫・軽卒・無経験に乗じて著しく不当な利益を得る約定をさせた場合などの特段の事情がない限り、契約全部が公序良俗(民法90条)に反して無効とはならない。 2. 代物弁済の一方の予約についても、上記と同様の特段の事情が認められない限り有効である。 3. 予約完結時の新給付(目的物)の経済的価値が本来の給付を著しく上回る場合であっても、原則として予約締結時を基準としてその不当性を判断すべきであり、特段の事情がない限りその効力は否定されない。
重要事実
上告人(債務者)は、被上告人(債権者)から月利8分(年利96%)という利息制限法を大幅に超える利率で金銭を借り入れ、その際、返済が滞った場合には不動産を代物弁済に供する旨の一方の予約を締結した。その後、債務の弁済期が徒過したため、被上告人は予約完結権を行使し、当該不動産の所有権移転登記を完了した。上告人は、利率が公序良俗に反し契約自体が無効であること、および不動産の価値が債務額を大幅に超過しており予約完結権の行使は無効であること等を主張して争った。
あてはめ
本件における月8分の利率は利息制限法を超過するが、原審において上告人の窮迫等に乗じて著しく不均衡な利益を得たといった特段の事情は認定されていない。したがって、契約全部を無効とすることはできない。また、代物弁済の予約についても、予約締結時を基準として著しく不当な内容であるとの立証がなされておらず、債務者が弁済期を徒過し、かつ損害金の支払も怠ったという経緯に照らせば、予約完結権の行使を信義則違反や権利濫用と評価することはできない。新給付の価値が本来の給付を上回る点についても、予約締結時を基準とした特段の事情の主張・立証がない以上、その効力は妨げられない。
結論
本件消費貸借契約および代物弁済の予約は有効であり、予約完結権の行使による不動産所有権の取得も適法である。したがって、上告を棄却する。
実務上の射程
利息制限法超過=即公序良俗違反(全部無効)という論理を否定した重要な判例である。もっとも、その後の法改正や譲渡担保・仮登記担保等の法理の発展により、現在は清算義務の構成等によって実質的な不公平が調整されることが一般的である。答案上は、民法90条の適用場面において「暴利行為」の該当性を判断する際の枠組み(主観的・客観的要件)として、本判決の示した「窮迫・軽卒・無経験」や「著しい不均衡」というフレーズを借用できる。
事件番号: 昭和34(オ)704 / 裁判年月日: 昭和37年4月17日 / 結論: その他
担保ないし代物弁済予約に供された物件の価額が被担保債権額を、上廻る場合でも債権者が債務者の無思慮、窮迫に乗じて暴利を図つたような事情がないかぎり、直ちに公序良俗に反するとはいえない。
事件番号: 昭和32(オ)568 / 裁判年月日: 昭和36年2月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約の解除後、明渡猶予の代償として合意された高額な損害賠償額の予定は、合意に至る経緯や目的等の具体的事実に照らし、直ちに権利濫用や公序良俗違反とはならない。 第1 事案の概要:賃借人(上告人)が、賃貸人(被上告人)に無断で家屋に度重なる大改造を加えたため、賃貸借契約が解除された。上告人は明渡…