判旨
債権者が催告に示した金額が真実の債務額より多額である場合であっても、同一の債務についてのものであり、かつその差額が約1割程度にすぎないときは、特段の事情のない限り、その催告は全体として有効である。
問題の所在(論点)
債務の履行を催告する際、催告された金額が実際の債務額を超過している場合(過大催告)、その催告は有効か。民法541条(解除の催告)等の要件に関連して問題となる。
規範
債権者が催告に示した債務と同一の債務を相手方が負担していることが認められ、かつ、その催告金額が真実の債務額より過大であっても、その差額が約1割程度にすぎない場合には、他に特段の事情の存しない限り、当該催告を全体として無効とすべきではない。
重要事実
債権者(被上告人)が債務者(上告人)に対し、債務の履行を催告した。しかし、その際に示された催告金額は、債務者が主張する(あるいは真実の)金額よりも約1割ほど多額であった。この金額の相違を理由として、債務者は当該催告の効力を争い、契約解除等の前提となる催告が無効であると主張した。
あてはめ
本件において、催告された債務は債務者が実際に負担している債務と同一性を有している。また、催告金額と真実の債務額との差は「約一割多額であるにすぎない程度」である。このような僅かな差額にとどまる場合には、債務者にとって履行の準備をなす上で著しい支障があるとはいえず、信義則上も催告を全体として無効とするほどの特段の事情は認められない。したがって、本件催告は有効なものとして取り扱われるべきである。
結論
本件催告は全体として有効であり、催告の効力を否定した上告人の主張は理由がない。
実務上の射程
過大催告の有効性に関するリーディングケースである。本判例の基準によれば、過大部分が僅少(1割程度)であれば有効となるが、著しく過大である場合や、真実の額を支払っても受領を拒絶する意思が明白な場合には、催告として無効、あるいは催告金額の限度で有効とされる可能性があるため、差額の程度と債権者の主観的態様(特段の事情)を考慮して論じる必要がある。
事件番号: 昭和34(オ)416 / 裁判年月日: 昭和37年3月9日 / 結論: 破棄差戻
延滞賃料額七、三五三円に対しこれを二九、九三〇円としてなした催告の無効をいうためには、右催告にあたり、催告額全額の提供を得なければ債権者がその受領を拒絶する意思を有したことの認定判示が必要であり、前示過大の程度のみでは、いまだ右受領拒絶の意思を推認することはできないから、右認定判示をしない点に理由不備がある。