催告賃料額が適正賃料額の約三、六倍であり、たとえ債務者が適正賃料額を提供しても債権者が受領を拒絶したであろうことが推認できる事情のもとでは、右催告は過大催告としてその効力が生じないというべきである。
過大催告として催告が無効とされた事例
民訴法541条
判旨
賃貸人による賃料支払の催告が真実の債務額を大幅に超過し、かつ、債務者が適正な額を提供しても受領しないことが客観的に認められる場合には、その催告は過大催告として無効となる。
問題の所在(論点)
催告された金額が本来の債務額を大幅に超過するいわゆる「過大催告」がなされた場合に、民法541条に基づく解除の前提となる催告として有効か。
規範
催告が真実の債務額を超過する場合であっても、原則として本来の債務の限度で催告の効力を有する。しかし、催告された金額が真実の債務額と著しく乖離しており、かつ、債務者が適正な額を提供したとしても債権者がこれを受領しないことが明らかであるなど、その催告を有効と認めることが不相当な特別の事情がある場合には、当該催告は無効となる。
重要事実
賃貸人Dが賃借人に対し、合計25,000円の賃料支払を催告した。しかし、当時の地代家賃統制令に基づく適正な賃料総額は6,842円であり、催告額は約3.6倍以上に達していた。また、Dは以前にも賃料の受領を拒絶しており、双方の家族間は喧嘩状態にあったことから、仮に賃借人が適正額を提供したとしても、Dが受領を拒絶したであろうことが推認される状況にあった。
あてはめ
本件におけるDの催告額(25,000円)は、統制賃料(6,842円)の3.6倍を超える大幅な超過である。また、過去の受領拒絶の事実や親族間の紛争状態に鑑みれば、賃借人が適正な債務額を提供してもDがこれを受領しないことが客観的に推認される。このような状況下での催告は、債務者に対して適正な履行の機会を与えるものとはいえず、信義則上、無効と解すべきである。
結論
本件催告は過大催告として無効であり、これに基づく賃貸借契約の解除は認められない。
実務上の射程
司法試験においては、民法541条の「催告」の有効性を判断する枠組みとして用いる。過大な程度が著しく、かつ債権者の受領拒絶の意図が強固であるという二点から、催告を無効として解除を否定する論理として活用できる。
事件番号: 昭和37(オ)304 / 裁判年月日: 昭和37年12月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃料の催告が本来の延滞額を著しく超過していても、債権者の法律解釈の誤り等に基づき、かつ債務者が催告された全額の提供をしない限り受領を拒絶する意思がなく、催告の過大さが不払いの原因でない場合は、正当な額の限度で催告として有効である。 第1 事案の概要:賃貸人(被上告人)は、賃借人(上告人)に対し、延…