延滞賃料額七、三五三円に対しこれを二九、九三〇円としてなした催告の無効をいうためには、右催告にあたり、催告額全額の提供を得なければ債権者がその受領を拒絶する意思を有したことの認定判示が必要であり、前示過大の程度のみでは、いまだ右受領拒絶の意思を推認することはできないから、右認定判示をしない点に理由不備がある。
過大催告を無効と判断するにつき理由不備があるとされた事例
民法541条,民訴法395条1項6号
判旨
賃料債務の催告において、実際の債務額を著しく超える過大催告がなされた場合であっても、債権者に過大額の提供がなければ受領を拒絶する意思がない限り、本旨の額の範囲で催告としての効力を有する。
問題の所在(論点)
賃務の催告において、実際の債務額を著しく超過する過大催告がなされた場合に、民法541条に基づく解除の前提となる催告として有効か、あるいは無効か。また、その判断において債権者の受領拒絶の意思をどのように考慮すべきか。
規範
催告が債務額を著しく超過する過大なものである場合であっても、原則として本旨の額の範囲で催告としての効力を生ずる。ただし、債権者が催告額全額の提供がなければその受領を拒絶する意思を有していたと認められる場合には、その催告は無効となる。なお、過大の程度のみをもって直ちに受領拒絶の意思を推認することはできない。
重要事実
賃貸人(上告人)は、賃借人(被上告人)に対し、賃料増額請求後の延滞賃料の支払を求めた。実際の延滞額は7,353円であったが、賃貸人は29,930円という実際の4倍を超える額を提示して催告を行い、これを理由に賃貸借契約の解除を主張した。原審は、この過大催告を当然に無効として解除を認めなかったため、賃貸人が上告した。
あてはめ
本件では、催告額(29,930円)が実額(7,353円)を大幅に超過しているが、原審はこの事実のみから直ちに催告を無効とした。しかし、催告が有効か否かは、賃貸人が「実額程度の提供では受領を拒絶したであろうか」という主観的な受領拒絶の意思に基づいて判断されるべきである。原判決では、賃貸人が実額の提供を拒絶する意思を有していた点について十分な審理・判断がなされておらず、単なる過大の程度のみから無効と断じた点に審理不尽・理由不備がある。
結論
過大な催告であっても、債権者に超過額の提供がなければ受領を拒絶する意思がない限り、実当額の限度で催告の効力を有する。したがって、受領拒絶の意思を審理せずに催告を無効とした原判決は破棄を免れない。
実務上の射程
契約解除の有効性を争う場面(民法541条)で、催告額の誤りを理由とする抗弁に対し、再抗弁(催告の有効性)を維持するために引用する。実務上は、過大の程度が著しくても直ちに無効とはならない点と、受領拒絶の意思という主観的要素が判断の鍵となる点に留意する。
事件番号: 昭和31(オ)596 / 裁判年月日: 昭和32年3月28日 / 結論: 棄却
一 附帯控訴状の記載全体から第一審判決を窺知することができるときは、第一審判決の表示を欠く違法があるとはいえない。 二 賃料延滞額を二三二、〇〇〇円としてなされた催告は、延滞額が一〇〇、二三〇円にすぎない場合であつても、催告金額全部の提供がなければ受領を拒絶すべき意思が明確でないときは、右延滞額の限度において有効と認め…