一 正当な賃料額の提供があつても債権者においてこれを受領しないことが明らかであつたとの特別の事情が認められない以上、過大催告の効力を否定すべきでない。 二 送達された第一審判決正本に裁判官の記名がなくても、これを異議なく受領して控訴を提起している以上、責問権を抛棄したものと認められる。
一 過大催告の効力を否定すべきでない場合 二 判決正本に裁判官の記名がない場合と責問権抛棄
民法541条,民訴法193条,民訴法141条
判旨
本来の債務額を超えて催告がなされた場合(過大催告)であっても、原則として本旨に従った催告としての効力を有し、その瑕疵が手続規定の違反にすぎない場合には責問権の放棄により治癒される。
問題の所在(論点)
本来の債務額を超える過大催告がなされた場合に催告としての効力が認められるか。また、判決正本の送達に瑕疵がある場合、異議なく控訴を提起したことでその瑕疵は治癒されるか。
規範
債務の履行催告において、本来の債務額を超えた過大な額の請求(過大催告)がなされた場合であっても、特段の事情がない限り、本来の債務額の範囲内で催告としての効力を有する。また、送達等の手続上の瑕疵については、当事者が異議なく受領して不服申立て等の手続を継続した場合には、責問権の放棄・喪失によりその瑕疵は治癒される。
重要事実
上告人は、相手方からの履行催告(過大催告)の効力を争うとともに、第一審判決正本の送達に裁判官の記名がないという手続上の瑕疵を主張して上告した。しかし、上告人は当該判決正本を異議なく受領した上で、適法に控訴を提起していた。また、過大催告の効力については原審が正当として支持した判断が存在した。
あてはめ
本件における過大催告については、先行する判例の趣旨に照らし、その効力を否定すべき特段の事情は認められず、催告としての効力が維持される。また、判決正本に裁判官の記名がないという送達の瑕疵についても、記録上その事実は認められない。仮にそのような瑕疵があったとしても、上告人は異議なくこれを受領して控訴を提起しており、手続上の利益を放棄したといえるため、責問権を放棄したものとみなされる。
結論
過大催告であっても催告の効力は認められ、また送達の瑕疵は控訴の提起等により責問権の放棄が成立するため、本件上告は棄却される。
実務上の射程
債法上の催告の有効性と、民事訴訟法上の送達の瑕疵・責問権の関係を整理する際に用いる。過大催告については、それが著しく多額で信義則に反するような特段の事情がない限り有効とする実務慣行を支える判決である。
事件番号: 昭和31(オ)495 / 裁判年月日: 昭和32年8月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債権者が催告に示した金額が真実の債務額より多額である場合であっても、同一の債務についてのものであり、かつその差額が約1割程度にすぎないときは、特段の事情のない限り、その催告は全体として有効である。 第1 事案の概要:債権者(被上告人)が債務者(上告人)に対し、債務の履行を催告した。しかし、その際に…