一 附帯控訴状の記載全体から第一審判決を窺知することができるときは、第一審判決の表示を欠く違法があるとはいえない。 二 賃料延滞額を二三二、〇〇〇円としてなされた催告は、延滞額が一〇〇、二三〇円にすぎない場合であつても、催告金額全部の提供がなければ受領を拒絶すべき意思が明確でないときは、右延滞額の限度において有効と認めるべきである。
一 附帯控訴状と第一審判決の表示 二 過大催告が有効と認められた事例
民訴法374条,民法541条
判旨
賃料支払の催告金額が真実の債務額を大幅に超過していても、債権者が正当な額の提供では受領を拒絶する意思が明確でない限り、催告は正当な額の範囲で有効である。
問題の所在(論点)
催告金額が真実の債務額を大幅に超過している場合に、その催告が有効な履行の催告(民法541条)として認められるか。また、短期間の催告期間(3日間)の適法性が問題となる。
規範
債権者が真実の債務額を超過する請求をした場合であっても、債権者がその請求額全部の提供がなければ受領を拒絶する意思が明確であると認められない限り、その催告は、真実の債務額を包含する限度において有効である。債務者は、その真実負担する債務額の提供をなすべき義務を負い、これに応じない場合は履行遅滞となる。
重要事実
賃貸人(被上告人)が賃借人(上告人)に対し、賃料不払を理由に契約解除を行う前提として、未払賃料の催告を行った。その際、催告された金額は真実の未払額を多額に超過するものであった。他方、過去の経緯として賃借人は賃料の一部(物品や手形を含む)を支払っており、賃貸人はこれを異議なく受領していた。また、賃貸人は未払分全部を請求する趣旨で催告を行い、3日間の催告期間を定めた。
あてはめ
本件では、賃貸人が請求額全部の提供がない限り受領を拒絶するとの明確な意思を有していたとは認められない。過去に賃貸人が一部の支払を異議なく受領していた事実から、真実の債務額を提供すれば受領したと解される。したがって、本件催告は正当な未払賃料額を包含する限度で有効である。また、上告人が商事会社であることや当時の貨幣価値を考慮すれば、3日間という催告期間も不当とはいえず、相当な期間を定めた催告といえる。
結論
本件催告は有効であり、債務者が真実の債務額を弁済しなかった以上、解除権の行使は適法である。したがって、本件上告を棄却する。
実務上の射程
過大催告があった場合の契約解除の効力を判断するリーディングケース。答案では「全額でなければ受領を拒絶する意思」の有無を検討し、特段の事情がない限り、正当な額の範囲で催告を有効とする構成をとる際に引用する。
事件番号: 昭和31(オ)495 / 裁判年月日: 昭和32年8月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債権者が催告に示した金額が真実の債務額より多額である場合であっても、同一の債務についてのものであり、かつその差額が約1割程度にすぎないときは、特段の事情のない限り、その催告は全体として有効である。 第1 事案の概要:債権者(被上告人)が債務者(上告人)に対し、債務の履行を催告した。しかし、その際に…