判旨
賃貸借契約の解除後、明渡猶予の代償として合意された高額な損害賠償額の予定は、合意に至る経緯や目的等の具体的事実に照らし、直ちに権利濫用や公序良俗違反とはならない。
問題の所在(論点)
賃貸借終了後の明渡猶予に伴い、賃料の約33倍という極めて高額な損害賠償額を予定する合意が、公序良俗違反、信義則違反または権利の濫用として無効となるか。
規範
損害賠償額の予定(民法420条1項)が、公序良俗(同法90条)や信義則(同法1条2項)に反し、または権利の濫用(同法1条3項)として無効あるいは制限されるかは、単に予定額と実損害等の金額的格差のみならず、契約解除に至る経緯、合意の目的、債務者の帰責性の程度等の諸事情を総合して判断すべきである。
重要事実
賃借人(上告人)が、賃貸人(被上告人)に無断で家屋に度重なる大改造を加えたため、賃貸借契約が解除された。上告人は明渡を懇請し、被上告人は1年を限度に明渡を猶予することに応じたが、その明渡を確実に履行させるための制裁として、猶予期限を徒過した場合には1日につき500円(当時の賃料の約33倍に相当)の損害金を支払う旨を公正証書により合意した。その後、期限が徒過されたため、被上告人が右約定に基づき損害金の支払を求めた事案である。
あてはめ
本件における約定損害金は賃料の約33倍と多額であるが、これは上告人による無断の大改造という重大な契約違反により解除された後、上告人自身の懇請によって得られた明渡猶予に基づくものである。また、この高額な損害金の設定は、猶予期限後の確実な明渡を確保するという制裁的機能を持たせるための合理的な目的があったと認められる。このような合意形成の経緯および明渡確保の必要性に鑑みれば、金額の多寡のみを捉えて権利濫用や公序良俗等に反するものとはいえない。
結論
本件の損害賠償額の予定は、公序良俗違反や権利の濫用には当たらず、有効である。
事件番号: 昭和30(オ)711 / 裁判年月日: 昭和32年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】利息制限法を超過する利息の約定がある消費貸借契約や、それに基づく代物弁済の予約は、公序良俗に反する等の特段の事情がない限り、直ちに全部が無効となるわけではない。また、予約完結時の目的物の価額が本来の給付額を上回っていても、予約締結時を基準として不当といえる特段の事情がない限り、予約完結権の行使は有…
実務上の射程
損害賠償額の予定を減額・無効化する主張に対する反論として有用。単なる不当利得的な性質だけでなく、制裁的・強制的な機能が合理性を持つ場面(不法占有の抑止等)では、相当程度の高額設定も維持されうることを示す。
事件番号: 昭和31(オ)596 / 裁判年月日: 昭和32年3月28日 / 結論: 棄却
一 附帯控訴状の記載全体から第一審判決を窺知することができるときは、第一審判決の表示を欠く違法があるとはいえない。 二 賃料延滞額を二三二、〇〇〇円としてなされた催告は、延滞額が一〇〇、二三〇円にすぎない場合であつても、催告金額全部の提供がなければ受領を拒絶すべき意思が明確でないときは、右延滞額の限度において有効と認め…
事件番号: 昭和41(オ)215 / 裁判年月日: 昭和41年6月24日 / 結論: 棄却
土地の不法占拠により土地所有者の蒙る損害額を、右土地を他に賃貸することにより通常得べかりし賃料相当額にあたる、と判断した点に違法はない。