適用なし。
一 停止条件付代物弁材契約が公序良俗に違反しないとされた事例 二 同一審級における裁判官の過半数の更迭と民訴法第一八七条第三項後段の適用の有無
民法90条,民法482条,民訴法187条
判旨
債務額を上回る価額の物件を代物弁済に供する契約は、債権者が債務者の窮迫・無経験・軽卒に乗じてなした等の特別の事情がない限り、公序良俗に違反し無効とはならない。
問題の所在(論点)
債権額と代物弁済の目的物の評価額との間に相当の開きがある場合、当該代物弁済契約は民法90条の公序良俗違反として無効となるか。
規範
代物弁済契約が公序良俗(民法90条)に反して無効となるかは、単に目的物の評価額と債権額との間に不均衡があることのみで判断すべきではない。貸主側において借主の窮迫、無経験、若しくは軽卒に乗じて契約を締結したといった「特別の事情」の存否によって決せられる。
重要事実
上告人は被上告人に対し、260万円の債務を有していた。その弁済として、上告人は約430万円(上告人主張では約785万円)の評価額を有する建物及びその敷地を譲渡する代物弁済契約を締結した。上告人は、債務額に対して目的物の評価額が過大であり、当該契約は公序良俗に違反し無効であると主張した。
あてはめ
本件における代物弁済の目的物の評価額は約430万円であり、260万円の債務額と比較して約1.6倍の開きがある。しかし、この程度の価格差は、直ちに契約を無効とするほどの暴利行為とはいえない。また、被上告人において、上告人の窮迫や無経験、軽卒に乗じて本件契約を締結させたといった特段の事情も認められない。したがって、価格の不均衡のみを理由に公序良俗違反と解することはできない。
結論
本件代物弁済契約は有効である。評価額が債務額を超過していても、暴利行為を構成するような特段の事情がない限り、公序良俗に反しない。
実務上の射程
契約自由の原則に基づき、単なる「対価の不均衡」だけでは90条違反とならないことを示した事例である。答案上は、暴利行為の該当性を検討する際、主観的要件(窮迫等への乗託)と客観的要件(著しい不均衡)の相関関係を論じる際のリファレンスとして活用できる。
事件番号: 昭和34(オ)704 / 裁判年月日: 昭和37年4月17日 / 結論: その他
担保ないし代物弁済予約に供された物件の価額が被担保債権額を、上廻る場合でも債権者が債務者の無思慮、窮迫に乗じて暴利を図つたような事情がないかぎり、直ちに公序良俗に反するとはいえない。