債務者の世話したテレビ代金を友人が支払わなかつたことから、テレビの売主から取込詐欺として追及され、刑事問題にまで発展しそうな形勢にあり、その弁償資金を得るため、債務者が右事実を債権者に告げて、債権額一〇六、九〇〇円の代物弁済として時価合計五〇万円を下らない土地建物の所有権を移転する旨の停止条件附代物弁済契約を締結したときは、右契約は公序良俗に反し無効である。
停止条件附代物弁済契約が公序良俗に反すると認められた事例。
民法482条,民法90条
判旨
債務額を著しく超過する時価を有する不動産を代物弁済の目的とする契約は、暴利行為として公序良俗に反し無効であり、無効な契約に基づく譲受人からの転得者も所有権を取得できない。
問題の所在(論点)
債務額を大幅に超過する時価の不動産を目的とする代物弁済契約が、民法90条の公序良俗に反して無効となるか。また、その無効を転得者に対抗できるか。
規範
民法90条の公序良俗違反(暴利行為)の成否は、給付と反対給付の不均衡、および受益者の主観的態様等を総合して判断される。債務額に比して代物弁済の目的物の価格が著しく高額である場合には、当該代物弁済契約は公序良俗に反し無効となる。また、同規定により契約が無効となる場合、当該契約に基づく権利移転も無効であるため、その後の転得者は、たとえ登記を具備していても権利を取得し得ない。
重要事実
債権者A1は、債務者に対し有していた貸金債権の担保として不動産に担保権を有していたが、昭和29年2月11日、当該不動産を目的とする代物弁済契約を締結した。当時の不動産の時価合計額は50万円を下らないものであったが、これに対し債務額(代物弁済の対価となる額)は著しく低額であった(具体的な債務額は判決文からは不明)。その後、A1は本件不動産を第三者A2に売却し、A2名義の所有権移転登記がなされた。
あてはめ
本件不動産の時価が50万円を下らないのに対し、代物弁済によって消滅する債務額との間には著しい不均衡が存在する。このような代物弁済契約は暴利行為に該当し、公序良俗に反するため無効である。次に、A1が本件不動産をA2に譲渡した点について、譲渡人A1は無効な代物弁済契約によって登記を得たに過ぎず、実体上の所有権を有しない無権利者である。したがって、無権利者から譲り受けたA2は、たとえ登記を具備していても本件不動産の所有権を取得することはできない。
結論
本件代物弁済契約は公序良俗に反し無効であり、転得者である上告人A2は本件不動産の所有権を取得できない。したがって、上告を棄却する。
実務上の射程
暴利行為による公序良俗違反が認められる場合、その無効は絶対的無効であり、善意の第三者保護規定(民法94条2項類推適用等)が働かない限り、転得者に対しても無効を対抗できることを示唆している。司法試験では、担保権の実行(譲渡担保等)における清算義務の不履行が暴利行為に至る場面などで、90条の適用を検討する際の有力な根拠となる。
事件番号: 昭和35(オ)1063 / 裁判年月日: 昭和36年6月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】代物弁済契約が公序良俗に反するか、または債権者による権利の行使が信義誠実の原則に反し権利濫用に該当するかは、契約締結の経緯や諸般の事情を総合的に考慮して判断されるべきであり、本件においてはそれらに該当しない。 第1 事案の概要:上告人らと被上告人との間で代物弁済契約が締結された。上告人らは、当該契…
事件番号: 昭和36(オ)976 / 裁判年月日: 昭和37年3月23日 / 結論: 棄却
登記のない建物については「建物保護ニ関スル法律」は適用されない。