登記のない建物については「建物保護ニ関スル法律」は適用されない。
未登記の建物と「建物保護ニ関スル法律」の適用
建物保護ニ関スル法律1条
判旨
借地権の対抗力について、登記のない建物に関しては建物保護に関する法律の趣旨を及ぼして借地権を保護することはできず、また、賃貸人たる地位の承継を認めない原審の判断に法令違背はない。
問題の所在(論点)
登記のない建物が存する借地において、建物保護に関する法律の趣旨を類推あるいは拡張解釈して借地権の対抗力を認めることができるか。また、賃貸人たる地位の承継が認められるか。
規範
借地権の対抗要件に関しては、建物保護に関する法律(現:借地借家法10条1項)に基づき、借地上に登記された建物を所有することが必要である。登記のない建物については、同法の精神を酌んで借地権の保護を拡張することは認められない。
重要事実
上告人は、土地の賃借権(借地権)を主張していたが、その地上にある本件建物については登記を備えていなかった。土地の所有権を取得した被上告人に対し、上告人は賃貸人たる地位の承継や建物保護に関する法律の精神に基づく借地権の保護を主張して対抗しようとした。原審は、賃貸人たる地位の承継を否定し、かつ登記なき建物による借地権の対抗力も認めなかった。
事件番号: 昭和34(オ)1276 / 裁判年月日: 昭和35年10月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強制競売によって建物の所有権を取得した事実は、登記の推定力に依拠せずとも、執行手続等の客観的事実に基づき認定することができる。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、強制競売の手続を通じて、本件建物および宅地の所有権を取得した。これに対し、上告人(被告)側は、原審が「登記の推定力」によって被上告人…
あてはめ
本件では、上告人が所有する建物に登記が存在しない。建物保護に関する法律は、登記という公示を要件として借地権の対抗力を認めるものであるから、登記を欠く以上、同法の精神を酌んで保護すべきとの主張は独自の見解にすぎず、法的根拠を欠く。また、賃貸人たる地位の承継についても、原審においてこれを認めない認定がなされており、信義則違反や権利濫用の主張も、原審の事実認定を覆すに足りる事情はないと解される。
結論
登記のない建物を所有していても借地権の対抗力は認められず、土地の譲受人に対して借地権を対抗することはできない。
実務上の射程
借地借家法10条1項(旧建物保護法1条)の適用において、公示の原則を厳格に解する立場を示す。答案上は、借地権の対抗要件が欠ける場合に、信義則等の一般条項や法の精神を理由とする例外的な救済が容易には認められないことを示すための根拠として活用できる。
事件番号: 昭和34(オ)1106 / 裁判年月日: 昭和37年3月27日 / 結論: 棄却
宅地およびその上の建物を甲が所有していたところ、抵当権の実行により乙が建物を競落して、法定地上権を取得し(その後に宅地につき土地区画整理法によつていわゆる現地換地による仮換地の指定がなされた)、次いで丙が地上権とともに建物を譲受け、さらにその後丁が甲から宅地を譲受けてそれぞれ所有権移転登記を経由した場合においては、丙が…
事件番号: 昭和30(オ)566 / 裁判年月日: 昭和31年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地賃借権の登記がなく、かつ地上建物にも登記がない場合、賃借人はその賃借権を土地の新所有者に対抗することはできない。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)は、本件土地について賃借権を有していた。しかし、当該賃借権の登記は未了であった。また、上告人は本件土地上に建物を所有していたが、被上告人(新所有者…
事件番号: 昭和36(オ)304 / 裁判年月日: 昭和36年9月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法10条(現行借地借家法14条)に基づく建物買取請求権は、買取請求の意思表示の時点において、土地賃借権が有効に存在していることを要件とする。 第1 事案の概要:上告人A1及びA2が、被上告人所有の土地を賃借し、その地上に建物を所有していた事案において、賃料の支払をめぐる争い等により賃貸借関係の…
事件番号: 昭和36(オ)1071 / 裁判年月日: 昭和37年11月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地譲渡担保において、譲渡担保権者から土地を取得した者に対し、借地人が建物登記による対抗力を具備していても、譲渡担保権者が賃借権を承認した事実がない限り、賃借権を対抗することはできない。 第1 事案の概要:Dは本件土地を株式会社E商店に譲渡(事案上、譲渡担保契約を基礎とする)し、所有権移転登記を完…