判旨
当事者が証人の取調べの申出を放棄した場合には、裁判所は当該証人の取調べを行うことができず、出頭を強制すべき義務も負わない。
問題の所在(論点)
当事者が自ら証人の取調べの申出を放棄した場合において、裁判所が当該証人の出頭を強制しなかったことは、訴訟手続上の違法となるか。
規範
民事訴訟における証拠調べは当事者の申出に基づくことを原則とする(弁論主義・処分権主義的側面)。したがって、当事者が一度行った証拠調べの申出を適法に放棄した場合には、裁判所はもはやその証人を取り調べることはできず、証人の出頭を強制する権限も義務も消滅する。
重要事実
上告人は、原審において証人Dを申請したが、当該証人に対する呼出状が不送達となった。その後、上告人は自らその証人の申請を放棄した。しかし、上告人は後に、原審が当該証人に対して出頭を強制しなかったことは違法であるとして上告を申し立てた。
あてはめ
記録によれば、上告人は原審において証人Dの申請を自ら放棄していることが明らかである。当事者が取下げ等により放棄した証人について、裁判所が職権で、または強制的に取調べを行うことは許されない。したがって、呼出状が届かなかったことを受けて申請を放棄した以上、裁判所が出頭強制の措置を講じなかったことに何ら手続上の過誤は認められない。
結論
裁判所が放棄された証人の出頭を強制しなかったことに違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
弁論主義の下での証拠申出の撤回・放棄の効力を確認した事例である。実務上、一度放棄した証拠について後から不作為の違法を主張することは信義則上も許されず、裁判所の証拠調べ義務は当事者の申出の維持を前提とすることを明示している。
事件番号: 昭和33(オ)320 / 裁判年月日: 昭和35年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者の訴訟態度に照らし、正当な理由なく出頭しない証人の取調べ決定を取り消し、唯一の証拠であっても却下して弁論を終結させる措置は、民事訴訟法上の違法とはならない。 第1 事案の概要:被告(上告人)は第一審に呼出しを受けながら不出頭で敗訴し、控訴した。控訴審において和解が試みられたが不調に終わり、上…