証人尋問が唯一の証拠方法であつても、右尋問期日に証人および申請当事者が出頭せず、しかも従来その当事者は病気、示談、調停などを理由として期日の延期または訴訟手続の停止申請をくり返すだけで訴提起以来数回行われた口頭弁論期日に一度も出張したことがたく訴訟代理人の選任もしない等の経過から見て、たとえ証人尋問のため新期日を指定しても右当事者が出頭し証人尋問を行うことを期待し難い事情のあるときは、その取調をしないで審理を終結しても違法ではない。
唯一の証拠方法を取調べなくても違法でないとされた事例。
民訴法259条
判旨
口頭弁論期日の変更は裁判所の職権事項であり、却下裁判に対し不服申立てはできない。また、当事者が再三出頭せず、証拠調べの実施が予期し難い事情がある場合には、唯一の証拠方法を取り調べなくても違法ではない。
問題の所在(論点)
期日変更申請を却下し、かつ唯一の証拠方法である証人尋問を実施せずに弁論を終結した裁判所の措置が、訴訟手続の違法(民訴法181条1項、247条、306条等に関連)にあたるか。
規範
口頭弁論期日の変更の許否は裁判所の職権事項(民訴法93条参照)であり、原則として不服申立ての対象とならない。また、裁判所は「唯一の証拠」であっても取り調べる義務を負うが、当事者のこれまでの訴訟態度等から、期日を改めても証拠調べの実施が客観的に期待できない特段の事情がある場合には、これを取り調べずに弁論を終結しても訴訟手続上の違法はない。
重要事実
上告人は、立替金債権を証明するため証人Dの尋問を申し出た。しかし、上告人は第一審から第二審に至るまで、病気や示談交渉、調停申立て等を理由に合計5回の期日に一度も出頭せず、訴訟代理人も選任していなかった。第二審の第3回期日においても高血圧を理由に欠席し、期日変更を申請したが却下された。この際、証人Dも不出頭であったため、原審は証拠調べの決定を取り消して弁論を終結し、判決を言い渡した。上告人は、唯一の証拠を取り調べなかったのは違法であると主張して上告した。
あてはめ
本件において、上告人は一審・二審を通じて一度も出頭しておらず、代理人の選任もしていない。第3回期日においても上告人および証人の双方が不出頭であり、これまでの経過に照らせば、仮に新期日を指定したとしても、上告人の出頭や証人尋問の実施を予期することは極めて困難である。このような訴訟遅延につながる不誠実な訴訟態度の下では、職権による期日変更を認めず、証拠調べ決定を取り消したとしても適法といえる。したがって、唯一の証拠を取り調べなかった判断に違法はない。
結論
原審の訴訟手続に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
実務上、証拠調べの必要性は裁判所の裁量に属するが、それが「唯一の証拠」である場合は原則として採用義務があると解されている。本判決は、その例外として、当事者の不当な欠席が続くなど証拠調べの実施が期待できない「特段の事情」がある場合には、採用義務が否定されることを示した。答案では、証拠採用の自由(181条1項)と適時提出主義の観点から、訴訟態度の不誠実さを強調する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和33(オ)630 / 裁判年月日: 昭和35年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴訟代理人の病気により期日への出頭が困難であっても、当事者本人や他の代理人による防御の余地があり、かつ証人尋問の不実施が当事者側の手続懈怠によるものである場合、期日変更をせず結審した判断に違法はない。 第1 事案の概要:上告人らの訴訟代理人が病気のため、口頭弁論期日に出頭することが困難な状況にあっ…